労働者協同組合上田(令和5年3月設立)

第二の人生を私たちが主役となって、地域の課題や問題を解決していく仕事の担い手になる。そして、次の人たちに継いでゆく

長野県上田市で、経験豊かな高齢者がいきいきと働く場を作ろうと、任意団体「ワーカーズ上田地域応援隊」を立ち上げ、その活動の中から、事業性が見えた営繕に関する事業を「労働者協同組合上田」(通称:労協うえだ)として法人化し、現在、営繕に関する仕事を中心に事業を展開しています。任意団体と労働者協同組合という二つの組織を連携させながら、ちょっとした手がほしい地域の身近な相談を地域の高齢者が仕事仲間としてお手伝いする仕組みを目指しています。

これまでの活動の経緯

「新しい働き方」を自分が動けるうちに地元で!

我々の活動のキッカケは、2年前に「労働者協同組合法が成立した!」との情報を知ったことです。ちょうど、現在の代表理事が定年を迎え、第二の人生のための仕事を探している時でした。
年齢的にも、厳しいかなと想いながらも、自分に合った働き甲斐が感じられるような仕事があったら良いなと求人情報を見たり、ハローワークに寄ってみたりしていましたが、当然ながらそんな都合のいい仕事はありません。
そうした中、自らが出資して、皆で仕事をつくり、そこで自らが働き、皆で配分するという「新しい働き方」を知り、自分が動けるうちに地元で取り組んでみたいと強く感じ、早速、現役時代の先輩に相談し、日本労働者協同組合連合会を紹介頂き、勇気を出して労働者協同組合ワーカーズコープ・センター事業団北陸信越事業本部に訪問(2021年5月11日)したことが活動の始まりでした。

2021年、仲間3人で、任意団体として「ワーカーズ上田地域応援隊」を立ち上げました。まずは、月に1回の定例会議を開くことから始め、初年度は6回にわたり話し合いを重ねました。はじめは「何をするの?」と問われても「皆で仕事を作って働くところさ?」くらいにしか答えられませんでした。もっと誰にでも分かりやすく、共感される様な説明が出来ないのかと考えていたところ、農業の経験のない仲間たちが集いプロジェクト活動の一環で野菜つくりに取り組んでいる労働者協同組合ワーカーズコープ・センター事業団の「アグリプロジェクトチーム」との交流が始まり、遊休農地の再生と有効利用として「市民ふれあい体験型家庭菜園」を開くきっかけとなりました。
こうした中で、任意団体「ワーカーズ上田地域応援隊」には、地域での実践活動として、農協の営農指導員の経験を活かしての「家庭菜園チーム」、電気工事資格を活かしての「営繕チームたすけ隊」、家庭菜園で採れた無農薬大豆を使っての「手作り味噌仕込み体験会」などに取り組む「農産加工チーム」や様々なチームを設け、各メンバーがそれぞれに所属して活動しています。
また、リモート会議やオンライン集会などに参加し、全国各地の実践例や様々な先進的取組を知ることで、改めて、労働者協同組合の考え方や仕組みを活かすことで、これまで手をこまねいていた課題や問題を解決しうる手段となることを学びました。

向かうべき方向と目標が見えたことで、発足当初には答えられなかった「何のために!」「何をするの?」の質問に、自分自身の言葉で自信もってこの活動の必要性を話すことが出来るようになってきました。

  • 遊休農地の再生Before&After
  • 再生した畑で収穫した作物

労働者協同組合で地域社会に役立つ仕事をする「第二の人生」

労働者協同組合法人を新規設立した動機は、このうち、2022年度に任意団体「ワーカーズ上田地域応援隊」が取り組んだ「営繕チームたすけ隊」の活動です。
具体的には、仲間の中に電気工事の資格を持った人材がいたことから、労働者協同組合ワーカーズコープ・センター事業団からの依頼を受け、1件のコミュニティスペースのリフォームと空調設備工事を受注したことがきっかけです。
この経験と実績から、営繕に関しては事業性を持った仕事が可能と判断して、この営繕に関する事業を中心とした「労働者協同組合上田」(通称:労協うえだ)を立ち上げました。

人生100年時代と言われて久しいですが、活動の目標は、「第二の人生を私たちが主役となって、地域の課題や問題を解決していく仕事の担い手になる。そして、次の人たちに継いでゆく」ということです。このことは、活動の動機ともなった定年後の過ごし方・関わり方そのものでした。
メンバーの多くは団塊の世代。高度経済成長の花形と一時はもてはやされましたが、今では大きな社会負担の象徴的な存在になっているのではないのかと思うに至りました。また、定年後の人生は「静かに楽しく余生を送る」「社会から何かをしてもらう」的な受け身で毎日が休日の楽しい老後を夢見ていましたが、とんでもないと気が付くのは半年もかかりません。現実はそんなにも甘くありません。
そうした中、高齢化社会問題は私たち高齢者が考え行動すると言う大胆な発想の転換が必要だと考えます。
そして、新しい発想で「年金+α」の強みを生かした生涯ライフスタイルを構築し、第二の人生で地域社会に役立つ仕事をするという労働者協同組合の仕組みを活用し、「好循環型地域社会の実現」を提案していきます。

活動に当たり大事にしていること(意見反映の方法等)

経験を生かして、楽しく、主体的に取り組む

何と言っても、楽しく仕事(活動)が出来ることです。とりわけ、労働者協同組合の活動での大原則は、自らが主体的に取り組むことです。言うまでもなく、命令されてやることは、楽しくないし、長続きしません。
そのため、「ワーカーズ上田地域応援隊」の活動参加に当たっては、一人一人が主体的に参加すること、そして、必ず、活動チームに参加すること、もし、参加したいチームがなかった時は、自らが創り組織することを理念としています。「ワーカーズ上田地域応援隊」の参加申込書は以下のものです。

参加申込書

わたしはワーカーズ上田地域応援隊の活動(仕事)趣旨に賛同しこの会に参加します。

わたしはワーカーズ上田地域応援隊の入会金2,000円を納入します。

わたしはワーカーズ上田地域応援隊の実践活動(仕事)チームに参加します。

参加しようとするチームがない場合は活動(仕事)したいチームを自らが組織します。

わたしは定款に従い「自らが出資し、自らが意見反映し、自らが働き、そして皆で平等に分配する」という基本理念に立って主体性をもって活動(仕事)します。

基本理念は、労働者協同組合と共通するもので、今も新規設立した「労協うえだ」と、これまで活動してきた「ワーカーズ上田地域応援隊」の2本立て組織で活動しています。「ワーカーズ上田地域応援隊」で様々な実践活動を積み重ねながら、継続可能で事業性が見通しできた活動を「労協うえだ」で更に発展させるべく、そんな仕組みで取り組んでいます。この2つの連携した取組を今後も大事にしながら、まずは、実践活動に取り組みます。

  • 経験を生かしたリフォーム作業

何事も自分から参加してゆく勇気が大事

その勇気ある行動で、必ず、新しい繋がりと新しい仲間とそして希望と可能性が生まれてくる!
私たちは、地域の方から「こんな講習会があるから出ないですか」と声を掛けていただいたときには、勇気を出して参加するようにしています。
なぜなら、私たちの活動の目標は「高齢者同士が助け合い、地域の身近な相談事を地域に住む元気な高齢者たちが仕事仲間としてお手伝いする」ことであり、この発想と仕組みづくりに、こうした機会から、一層、自信と確信を得ることできるからです。

例えば、2022年11月に市内2か所の地域包括支援センターが主催して開かれた勉強会「つながりと健幸づくり住民パートナー養成講座」に知人から誘われ、参加しました。信州大学の井上教授が「地域を元気にするつながりづくり」をテーマに講演、「まちづくり協議会などの活動紹介」、「地域の拠り所として運営しているサロン塩川の現地視察会」など4回にわたる講座を通じ、学びとともに多くの地域活動を知ることができました。

とりわけ、そこでの一人一人の出会いが、今では、共通の目的に向かうパートナーとして、また、地域活動の仲間としてのお付き合いに繋がりました。ここでの繋がりがきっかけで、いよいよ2023年7月31日には、私たち「労協うえだ」の具体的な活動である地域問題を学び、解決してゆく仕組みの提携先となる地域包括支援センターとの交流会や話し合いが始まります。

活動に当たり生じた困難や課題、それに対する対応

「お付き合いで」「友達だから」だけでは、この活動は継続できない

残念だったことは、活動開始当時からの仲間がリタイアしてしまったことです。理由は、「自分のやりたい事が見つからない」「自分の苦手な分野ばかりで、ついていけない」というものでした。やはり自らが本気でやってみたいと思えなければ難しいと感じてしまい、やる気を失い結局辞めてしまうという結論に繋がるのだと理解しました。

「お付き合いで」「友達だから」だけではこの活動は継続できないということの教訓となり、改めて、「労働者協同組合法」の理念と考え方が共有できていなかったものと痛感しました。
この教訓が日本労働者協同組合連合会への加入の動機にもなりました。先進的な活動を積極的に学びながら自らも成長してゆく努力と交流・学習活動の重要性を再認識したからです。

今後の方向性

高齢者仲間たちによる高齢者同士の助け合いが、地域問題の解決に!

新規設立をしたばかりなので、まずは地域や仲間の皆さんに信用され信頼される様な活動(仕事)をすることです。

お陰様で、2023年4月には、地域の人からの紹介で、高齢者世帯のご夫人の方から、「自宅の屋根の塗装をしてほしい」「業者に頼んでも良いのだけれど、一人世帯なので不安がある」との相談を頂き、私たちの仕事3原則(現地調査・面談と打合せ・見積書と工程表の提出)に従い、最初の仕事を頂きました。作業は一か月ほどかかりましたが、お茶を出していただいた休み時間には、久しぶりに話が盛り上がり楽しい時間が過ごせました。出来上がりも、「期待した以上に、奇麗にできて良かった」と褒めていただきました。

丁寧な仕事と約束を守る事。これが信用をいただく基本だと思っています。

  • 労働者協同組合として初めて取り組んだ「屋根の塗装」

そして、新規設立をした目的の一つである、地元行政からの入札参加資格を得ることで、仕事を作り出すことです。いよいよ、小規模工事受注資格が2023年7月から取れますので、早速市役所各課をはじめ出先機関にも名刺配りをしながら、営業活動に取り組みます。

また、新たに組合員になった方に警察官OBの方がいるので、そのキャリアを生かしながら、長野県で多く栽培されるりんごなどの農園の見守り警備などの仕事づくりを検討していきたいと考えています。

私たちの活動の狙いは、高齢者仲間たちによる高齢者同士の助け合いが、地域問題の解決の糸口になることです。つまり、身近な相談事を地域に住む身近な高齢者たちが仕事仲間としてお手伝いする「労働者協同組合法」を活かしての仕組みづくりです。
具体的には、地域包括支援センター・社会福祉協議会・まちづくり協議会など地域の皆さんと提携して、私たちの労働者協同組合が問題解決の受け手として様々な仕事集団を作って行くことです。
これは時間がかかっても、地域になくてはならない取組だと思っています。そして、待ったなしの少子高齢化社会の中で、新しい地域社会の在り方を見直し、その再構築を図っているものであり、この取組は、必ず様々な地域社会が抱える課題を解決していく道筋になるものと考えています。

基本情報

法人名  労働者協同組合上田
事業所の所在地  長野県上田市新町52-2
設立  2023年3月24日
事業内容  水道・電気・空調設備工事など営繕、住宅整備・回収、庭木伐採・剪定・草刈、農地の再生・作付栽培・販売ほか
組合員数  6人
組合員の年代別構成  50代~70代
組合員以外の就労者  0人
売上高  255万円(年間見込額)
出資1口の金額  2,000円
出資の総口数  50口

(令和5年6月末現在)