労働者協同組合法は、労働者協同組合の設立や運営、管理などについて定めた法律です。
この法律では、労働者協同組合は、以下1~3の基本原理に従い、持続可能で活力ある地域社会に資する事業を行うことを目的とするよう定めています。

基本原理

  1. 組合員が出資すること
  2. その事業を行うに当たり組合員の意見が適切に反映されること
  3. 組合員が組合の行う事業に従事すること

労働者協同組合の主な特色

  1. 労働者派遣事業を除くあらゆる事業が可能です。介護・福祉関連 (訪問介護等)、子育て関連(学童保育等)、地域作り関連(農産物加工品販売所等の拠点整備等)など地域における多様な需要に応じた事業を実施できます。ただし、許認可等が必要な事業についてはその規制を受けます。
  2. 設立には3人以上の発起人が必要です。NPO法人(認証主義)や企業組合(認可主義)と異なり、行政庁による許認可等を必要とせず、法律に定めた要件を満し、登記をすれば法人格が付与されます(準則主義)。
  3. 組合は組合員との間で労働契約を締結します。
  4. 出資配当は認められません。剰余金の配当は、組合員が組合の事業に従事した程度に応じて行います。
  5. 都道府県知事による監督を受けます。

労働者協同組合法の目的

この法律は、各人が生活との調和を保ちつつその意欲及び能力に応じて就労する機会が必ずしも十分に確保されていない現状等を踏まえ、組合員が出資し、それぞれの意見を反映して組合の事業が行われ、及び組合員自らが事業に従事することを基本原理とする組織に関し、設立、管理その他必要な事項を定めること等により、多様な就労の機会を創出することを促進するとともに、当該組織を通じて地域における多様な需要に応じた事業が行われることを促進し、もって持続可能で活力ある地域社会の実現に資することを目的としています。(法第1条

労働者協同組合法 (令和2年法律第78号)

労働者協同組合法 概要

労働者協同組合法について

労働者協同組合法の背景

なぜ法律を作ることになったの?

法律ができた背景

背景

我が国では、少子高齢化が進む中、人口の減少する地域において、介護、障害福祉、子育て支援、地域づくりなど幅広い分野で、多様なニーズが生じており、その担い手が必要とされております。


これらの多様なニーズに応え、担い手となろうとする人々は、それぞれのさまざまな生活スタイルや多様な働き方が実現されるよう、状況に応じてNPOや企業組合といった法人格を利用し、あるいは任意団体として法人格を持たずに活動しています。


しかし、これら既存の法人格の枠組みのもとでは、出資ができない、営利法人である、財産が個人名義となるなど、いずれも一長一短があることから、多様な働き方を実現しつつ地域の課題に取り組むための新たな組織が求められています。
そこで、組合員が出資し、それぞれの意見を反映して組合の事業が行われ、組合員みずからが事業に従事することを基本原理とする新たな組合を創設することとしました。

労働者協同組合の通則

どういうものが「労働者協同組合」なの?

Q組合の要件は何ですか?

組合の要件

組合は、基本原理(出資原則・意見反映原則・従事原則)に従い事業が行われることを通じて、持続可能で活力ある地域社会の実現に資することを目的とするものでなければなりません(法第3条1項)。そして、この基本原理のほかに、次のような組合の要件を遵守する必要があります(法第3条2項)。

• 任意加入・任意脱退
• 組合員との間での労働契約の締結
• 組合員の議決権・選挙権の平等
• 組合との間で労働契約を締結する組合員が総組合員の議決権の過半数を保有
• 剰余金の配当は従事分量配当によること

組合の要件のうち、特徴的なものを説明します。

「組合との間で労働契約を締結する組合員が総組合員の議決権の過半数を保有」
労働者協同組合の意思決定が労働契約を締結して事業に従事する組合員の手に委ねられるべきであることを議決権の数の上でも明確にするものです。

「剰余金の配当は従事分量配当によること」
労働者協同組合法では、働く場を自分たちで創りその財産的基礎も自分たちで確保したいと いうニーズに応えるため、組合員による出資が規定されています。しかし、この出資の持分に応じた剰余金の配当を認めることは、組合の非営利性の観点から適当ではありません。一方で、剰余金は、組合員が事業に従事した成果であるため、その成果を従事に応じて分配することは 許容されるものと考えられます。

そこで、組合は、組合員が脱退する場合に出資額を超える払戻しを認めず(法第16条1項)、配当についても、出資配当を禁止した上で、事業従事の成果を分配するための従事分量配当のみを可能としています。

その他の遵守事項

組合の遵守事項として、特定の政党のための利用の禁止(法第3条5項)、暴力団排除条項(法第3条6項)等を定めています。
なお、組合が組合要件や遵守事項に違反した場合の罰則は設けられていませんが、行政庁(都道府県知事)による監督の仕組みが設けられています(法第124条以下)。

Q組合員の資格に制限はありますか? 法人でもなれますか?

組合員の資格

組合の組合員たる資格を有する者は、定款で定める個人とし、法人組合員は認められていません(法第6条)。組合員自らその事業に従事するとの組合の基本原理の趣旨に反するからです。定款事項としては、組合の事業に関する経験を有することなどが想定されます。例えば、建築を目的とする組合であれば、大工工事等の経験者などが想定されるでしょう。

Q組合はどういう事業を行うことができるのですか?

組合が行う事業

組合の基本原理に従って行われる、持続可能で活力ある地域社会の実現に資する事業であれば、原則として自由に行うことができます(法第7条1項)。その場合であっても、例えば、介護保険事業など、許認可等が必要な事業についてはその規制を受けます。

一方で、組合は、労働者派遣事業を行うことができません(法第7条2項)。労働者派遣事業は、他人の指揮命令を受けて当該他人のために労働に従事させる事業であり、組合の基本原理に反するものであるからです。これに違反した場合には、罰則が課せられます(法第136条1項2号)。

Q組合の運営に関するルールはありますか?

事業従事に当たっての人数要件

法第8条1項は「総組合員の5分の4以上の数の組合員は、組合の行う事業に従事しなければならない」と(5分の4要件)、2項は「組合の行う事業に従事する者の4分の3以上は、組合員でなければならない」と規定しており(4分の3要件)、組合の運営・事業活動に、一定の柔軟性を持たせています。国会審議においては、それぞれの要件の趣旨が確認されました。

5分の4要件

組合の基本原理を踏まえれば、全ての組合員が組合の行う事業に従事することが適当です。しかし、実際には、家庭の事情によって当分事業に従事できなくなるなど、事業に従事する意思はあるものの従事することができない者が存在することが想定されます。5分の4要件は、そのような事業に従事することができない組合員について、常に組合からの脱退を求めることは組合の構成を不安定にさせるとの考えに立ち、そのような組合員が一定程度存在することを許容するものです。

その上で、組合が5分の4要件を満たせない可能性が出てきた場合に、業務に従事していない組合員が除名されるおそれがないよう、単に事業に従事しないことではなく、長期間にわたって組合の行う事業に従事しないことを除名事由として位置付けているほか(法第15条2項1号)、除名に当たっては、厳格な手続を定めています。したがって、事業に従事していない組合員の割合を理由に、直ちに組合員資格を剥奪することはできません。

4分の3要件

組合の実際の事業活動においては、事業の繁忙期における人手不足などで、アルバイトとして非組合員を事業に従事させる必要が生じる可能性があります。また、組合では、出資の全額の払込みを完了したときに組合員となるため(法第12条2項)、組合の事業に従事しながら分割で出資の払込みを行い、組合員になろうとする者が出てくることも想定されます。

4分の3要件は、このような実際の必要性に鑑み、組合の基本原理を損なわない範囲内において組合の事業活動に柔軟性を持たせるものです。

▶︎参照:Q 事業従事など、人数要件について分かりやすく教えて欲しい。

組合員になるにはどうすればいいの?

組合員

組合員の出資義務

組合員は、出資一口以上を有しなければなりません(法第9条1項)。これは、基本原理の一つである出資原則(法第3条1項1号)からの当然の要請であり、労働者協同組合においては、出資をせずに組合員となることは認められません。他の組合員とともに意見を出し合いながら働く場を組合員自身で作るという組合の性格に鑑みれば、全ての組合員が組合の事業に必要な財産的基礎について一定の拠出を行うべきであるからです。

出資において、一組合員の出資口数は、原則として出資総口数の「100分の25」を超えることができません(法第9条3項)。これは、組合員はその出資口数にかかわらず平等に議決権・選挙権を有しますが(法第3条2項3号)、無制限に出資口数の保有を認めると事実上その者の影響力が増し、この平等の原則が崩れかねないこと、また、多くの出資口数を持つ組合員が脱退した場合、直ちに組合の事業が立ち行かなくなるおそれがあることから設けられた規定です。

なお、組合員の脱退に伴う一定の場合には、例外的に、総会の特別議決に基づく組合の承諾を得て、総口数の「100分の35」に相当する出資口数まで保有することができます(法第9条3項但書)。これにより、組合財産の維持と組合員の平等の確保の要請との均衡が図られています。

▶︎参照:Q 出資制限を設けているが、その理由について教えて欲しい。

議決権及び選挙権

組合員は、一人につき各一個の議決権及び選挙権を有します(法第11条1項)。これは、組合の基本原理である意見反映原則を支えるものであり、また、組合要件である「組合員の平等の原則」(法第3条2項3号)を組合員側から規定したものです。

組合員の加入

組合員の任意加入は組合要件の一つです(法第3条2項1号)。そのため、組合は、組合員としての資格を有する者が組合に加入しようとするとき、「正当な理由」がないのにその加入を拒否したり、現在の組合員が加入の際に付されたよりも困難な条件を付してはなりません(法第12条1項)。

任意加入が協同組合の普遍的な要件の一つであることを踏まえれば、組合が加入を拒否することができる場合は、慎重に判断される必要があります。したがって、「正当な理由」に該当するかについては、加入の自由が不当に害されることのないよう、労働者協同組合法の趣旨を踏まえて限定的に判断されるべきものと考えられます。具体的に「正当な理由」に該当し得るのは、その者の加入を認めることで組合の円滑な事業活動や組織運営に支障をきたすことが予想される場合などが考えられます。例えば、加入希望者側の事情として、①除名事由に該当する行為を現にしているか、することが客観的にみて明らかであること、②加入申込前に外部から組合の活動を妨害していたような者であること、組合側の事情として、受入能力が不足していること(人手の充足)等が挙げられるでしょう。

組合に加入しようとする者は、組合の承諾を得た上で、引き受けた出資口数に応じた金額の払込みを完了した時に組合員となります(法第12条2項)。

持分の譲渡制限

組合員の持分は、譲渡することができません(法第13条)。組合の基本原理や、組合員の資格を定款で定める個人とすること(法第6条)に現れているように、組合は、組合員同士の間の信頼関係に基づく人的結合の強い組織であり、その性質上、持分の譲渡はなじまないとの考えに基づきます。

組合員を辞めたいときはどうするの?

組合員の脱退

脱退の種類

脱退の自由は、組合の要件です(法第3条2項1号)。

脱退については、各組合員が任意に脱退する自由脱退(法第14条)、法定の事由に該当する場合に脱退となる法定脱退があります。そして、法定脱退として、資格の喪失、死亡、除名(法第15条1項1号から3号まで)の3つが規定されています。

除名

除名事由

組合員の地位に最も重大な影響を与えるのが「除名」であり、そのため、除名事由は、①長期間にわたって組合の行う事業に従事しない場合、②出資の払込みその他組合に対する義務を怠った場合、③定款事由に該当する場合に限定されています(法第15条2項各号)。

「長期間にわたって組合の行う事業に従事しない場合」
出資のみを行い組合の行う事業に従事しない組合員をはじめ、長期間にわたって組合の行う事業に従事しておらず、もはや従事の意思がないと認められる組合員については、事業従事の基本原理を満たさないため、除名事由としています。もっとも、組合員が、様々な事情により一時的に組合の行う事業に従事できなくなることは想定され得ることです(法第8条1項参照)。
そこで、一度又は短期間、事業に従事しなかったことのみを理由として恣意的に除名されることを防止する趣旨で、「長期間にわたって」との文言が置かれています。
どの程度の期間が「長期間」に該当するかについては、組合の行う事業の態様や組合員への事業分担の状況等、個別具体的な事情に応じて判断されます。

「出資の払込みその他組合に対する義務を怠った場合」
「出資の払込み」は、出資一口の金額を増加する場合等をいい、加入の際の出資の払込みについては、完了しなければそもそも組合員の地位を取得できません(法第12条2項)。

■「定款事由に該当する場合」
定款事由としては、組合の存立に重大な影響を与える行為、例えば、組合運営の妨害行為、犯罪その他組合の信用を失墜させる行為などが想定されますが、定款においてその内容が具体的に規定されることが望まれます。

除名手続

除名に当たっては、それが濫用的なものにならないよう、慎重かつ厳格な手続をとる必要があります。すなわち、組合は、該当の組合員に 事前に通知し、総会において弁明する機会を付与した上で、総会の特別議決(法第65条3号)によらなければ(法第15条2項)、除名することはできません。

労働契約はどうなるの

労働契約

労働契約の締結等
組合の労働契約締結義務

組合は、一定の者を除き、その行う事業に従事する組合員との間で、労働契約を締結しなければなりません(法第20条1項)。労働契約の締結義務は、組合要件でもあります(法第3条2項2号)。

労働契約を締結する必要がない者は、①組合の業務を執行する組合員(代表理事)、②理事の職務のみを行う組合員(専任理事)、③監事である組合員となります(法第20条1項)。例外とされる理由は、①代表理事・②専任理事については、 組合と委任契約を締結して業務に当たっており(法第34条)、いわば使用者側の立場であること、③監事については、監査の独立性を担保する必要があることが挙げられます。

▶︎参照:Q 労働者協同組合にはどのような機関が置かれるのですか?

国会審議での論点

労働者協同組合法において最も重要な規定の一つである法第20条1項については、国会審議において、次のような事項が確認されました。

労働者性の判断

一般的には、労働契約を締結した組合員全員に、労働基準法、最低賃金法、労働組合法等の労働関係法規が適用されます。その上で、具体的な法令の規定の適用に当たっては、個別の事案の具体的な実態に応じて、労働関係各法に定める労働者に該当するか否か等が判断されます。

その際には、労働者協同組合法に労働契約締結義務が規定されていることも勘案されるものと考えられます。

いわゆる「名ばかり理事」

形式上は専任理事として任命されながら、実態は代表理事の指揮命令に従っており、人事権や予算執行権がない者について、専任理事といいながら実態として労働契約を締結せずに組合の事業に従事させる事態は、法第20条1項に違反します。

労働者協同組合における労働組合の結成

労働者協同組合法には、労働組合の結成を妨げる規定はなく、労働者協同組合で働く者も、労働組合法上の労働者に該当する者であれば、労働組合を結成することが可能です。一般的に労働組合に認められる権利、権能は全て認められます。

組合員としての地位と労働契約の関係

本来、組合の各構成員が組合員としての地位を有することと労働者としての地位を有することとは別個の問題ですが、労働者協同組合においては、組合員が組合の行う事業に従事することは基本原理の一つとされ、二つの地位が密接に関連しています。そのため、組合が特定の組合員との労働契約を終了させることを企図し、恣意的にその組合員を脱退させるといった事態を防ぐため、死亡による法定脱退を除き、組合員の脱退は、労働契約を終了させるものと解してはならない旨を定めています(法第20条2項)。

不利益取扱いの禁止

組合において組合員として権利を行使することが、労働者としての地位を脅かすこともあってはなりません。そのため、組合員(組合員であった者を含む)であって労働者として組合の事業に従事するものが、議決権等の行使、脱退その他の組合員の資格に基づく行為をした場合に、それを理由として解雇その他の労働関係上の不利益な取扱いをしてはならないこととしています(法第21条)。

労働者協同組合の設立

どうすれば設立できるの?

労働者協同組合の設立

設立

設立の流れもご参考ください。

組合の設立は、主たる事務所の所在地において設立の登記をすることによって成立し(法第26条)、設立の認可等を要しません(準則主義)。これにより、地域の課題に迅速に対応するため、組合を比較的短期間で設立することが可能ですが、その反面、制度悪用の弊害も生じ得ます。

▶︎参照:Q 設立するにはどうしたら良いか教えてください。

そこで、制度悪用の防止のため、次のような規定が設けられています。

①組合の基本原理、組合要件及び遵守事項の明確化(法第3条

②行政庁(都道府県知事)の監督

• 行政庁への各種届出(成立(法第27条)、解散(法第80条3項)等)

• 休眠組合のみなし解散(法第81条

• 行政庁による監督(法第124条以下

• 厚生労働大臣による指針の策定(法第130条

③設立無効の訴え等(法第23条8項法第28条

労働者協同組合の管理

定款や規約ってどうなるの?

社会保険・会計・組合員(リンク)もご参考ください。

定款・規約

定款

組合の組織や業務運営の基本的規則である定款には、会社や他の協同組合と共通する事項のほか、労働者協同組合法に特徴的な事項の記載も求められています。

定款に記載することが義務付けられている事項は15あり、①組合に関する事項(事業、名称など)、②組合員に関する事項(組合員たる資格など)、③会計に関する事項(就労創出等積立金など)、④その他の管理事項(組合員の意見を反映させる方策など)となります(法第29条1項)。

そのうち、特徴的な記載事項として、次のようなものがあります。

■「事業を行う都道府県の区域(法第29条1項3号)」
組合が、持続可能で活力ある地域社会の実現に資するという目的を持つこと(法第3条1項)を踏まえ、その活動する区域を明らかにするものです。都道府県は一つに限定されるものではなく、仮に全国で活動する組合であれば、全ての都道府県を記載することが想定されます。

■「組合員の意見を反映させる方策に関する規定(法第29条1項12号)」
組合の基本原理の一つである意見反映原則を担保する趣旨です。組合員それぞれの意見をどのように集めるのか、出てきた意見はどう集約していくのかといった点について、各組合の状況を踏まえて定めることが想定されます。例えば、会議において意見を集約するのであれば、開催方法、開催の時期・頻度、最終的な意思決定の方法などが、日常的に意見を集約するのであれば、意見箱の設置などその具体的な方法が定款に記載されることが期待されます。

▶︎参照:定款の作成とありますが、どのような内容を記載したら良いのでしょうか?

規約

規約は、組合員間を規律する自治規範であり、定款を補完するものとして、組合運営の詳細や事務的な事項について定めることができます(法第30条)。

役員ってどうするの?

役員

役員総論
役員の種類

役員は、理事及び監事であり(法第32条1項)、理事の定数は3人以上、監事の定数は1人以上です(法第32条2項)。理事の任期は2年以内の定款で定める期間(法第36条1項)、監事の任期は4年以内の定款で定める期間です(法第36条2項)。

▶︎参照:Q 労働者協同組合にはどのような機関が置かれるのですか?

選挙

理事及び監事は、原則として総会において選挙されます(法第32条3項)。役員の選挙は、一人一票の無記名投票によって行われます(法第32条7項・8項)。

欠格事由

法人は役員となることができないほか(法第35条1号)、役員の欠格事由として、①一定の心身の故障のため職務を適正に執行することができない者(法第35条2号)、②労働者協同組合法等の法令に違反し、刑に処せられてから2年を経過していない者等(法第35条3号・4号)、④暴力団の構成員等(法第35条5号)が定められています。

このうち、④は、組合の遵守事項である暴力団排除条項(法第3条6項)とあわせて、暴力団による組合制度の悪用を防止する趣旨です。

改選請求

組合員は、総組合員の5分の1以上の連署をもって、役員の改選を請求することができます。そして、総会において出席者の過半数の同意があったときは、その役員は失職します(法第53条1項)。

理事

理事は理事会を組織し、総会での議決事項を前提に、その個別具体的な業務執行について決定すること等を任務とします。理事は組合員でなければならず(法第32条4項)、いわゆる外部理事は認められていません。これは、出資をせず、かつ、理事の職務以外の事業に従事することが想定されていない外部理事が組合の業務執行に関わることは、組合の基本原理の趣旨に反するためです。

▶︎参照:Q 理事及び、監事は誰が選ぶのですか?
▶︎参照:Q 理事及び、監事の任期はどのようになっていますか?

監事

監事は、理事の職務の執行を監査し、監査報告を作成する義務を負います(法第38条2項)。適切な監査を確保するため、監事は、理事・組合の使用人(役員以外の組合員)と兼職してはなりません(法第43条)。なお、少人数の組合では、後述するように、組合員監査会制度を利用することができます。

また、組合員の総数が一定数を超える組合では、監査の適法性を確保するため、少なくとも一人の外部監事を置くことが義務付けられています(法第32条5項)。この点、外部理事が禁止されていることとは趣旨が異なることに注意が必要です。 

▶︎参照:Q 理事及び、監事は誰が選ぶのですか?
▶︎参照:Q 理事及び、監事の任期はどのようになっていますか?

役員の報酬
理事

報酬、賞与その他の職務執行の対価として組合から受ける財産上の利益(報酬等)についての次に掲げる事項は、定款に定めていないときは、総会の決議によって定めることとなります。(法第38条3項会社法第361条

  • 報酬等のうち額が確定しているものについては、その額
  • 報酬等のうち額が確定していないものについては、その具体的な算定方法
  • 報酬等のうち金銭でないものについては、その具体的な内容

総額を定めることも、各理事の額を定めることもできますが、総額のみの場合の配分については、理事会で報酬規程を定めて運用することが考えられます。
なお、上記事項を定め、又はこれを改定する議案を総会に提出した理事は、当該総会において、当該事項を相当とする理由を説明しなければなりません。

監事

報酬等は、定款にその額を定めていないときは、総会の決議によって定めることとなります。(38条3項会社法第387条
総額を定めることも、各監事の額を定めることもできますが、総額のみの場合の配分については、監事の協議によって定めることとなります。
なお、監事は、総会において、監事の報酬等について意見を述べることができます。

理事会

労働者協同組合では、全ての理事で組織する理事会が必置機関であり(法第39条1項・2項)、組合の業務執行については、理事会で決定されます(法第39条3項)。理事会は、理事の中から、代表理事を選定します(法第42条1項)。

▶︎参照:Q 理事及び、監事は誰が選ぶのですか?
▶︎参照:Q 理事及び、監事の任期はどのようになっていますか?
▶︎参照:Q 理事会ではどのようなことを決めるのですか?

Q役員はどんな責任を負うの?

役員の任務懈怠責任・第三者に対する責任

役員の損害賠償責任

役員の適正な職務執行の確保の観点から、労働者協同組合法上、役員は

① 組合に対する任務懈怠に基づく損害賠償責任(任務懈怠責任)(法第45条

② 組合や第三者に対する損害賠償責任(不法行為責任)(法第46条

を負うこととされています。
役員が上記の損害賠償責任を負う場合、他の役員もその損害賠償責任を負うときにはこれらの役員は連帯債務者となるため、それぞれが債務全額を履行する義務を負うことになります。(法第47条

上記以外に、民法上の不法行為責任も負います。

組合に対する任務懈怠責任
役員の善管注意義務・理事の忠実義務

組合と役員の関係は委任に関する規定に従うこととされていますので、役員は組合に対して、善良なる管理者の注意をもって職務を執行する義務(善管注意義務)を負っています。(法第34条民法第644条
加えて、理事は、法令、定款及び規約並びに総会の決議を遵守し、組合のため忠実にその職務を行わなければならないとされています。これを忠実義務といいます。(法第38条1項
理事は理事会を組織し、総会での議決事項を前提に、その個別具体的な業務執行について決定すること等を任務としており、理事個人としての職責や、また、理事会の構成員として代表理事の執行を監視する職責を担っています。

任務懈怠責任

役員がこれらの義務に違反したとき、例えば、理事が定款違反の行為を行った場合には、忠実義務違反となりますので、「役員」が「任務を怠ったとき」に当たります。
役員が任務を怠り、任務を怠ったことによって組合に損害が生じた場合は、理事は組合に対する損害賠償責任(任務懈怠責任)を負います。(法第45条1項

責任の全部免除

任務懈怠責任は、組合員全員の同意があれば免除できます。(法第45条4項

責任の一部免除

責任を負う役員が職務を行うにつき善意、かつ、重大な過失がないときは、総会の特別の議決により、責任の一部免除をすることが可能です。役員の区分に応じて定められた最低責任限度額については、免除することができません。(法第45条5項各号法第65条第6号

▶︎参照:Q 役員の任務懈怠責任とは何ですか?
▶︎参照:Q 既に発生した役員の任務懈怠責任を免除することはできますか?

理事会決議による責任の一部免除

役員による任務懈怠行為がなされる前に、定款において、理事会決議による責任の一部免除を定めておくことが可能です。(法第45条9項会社法第426条1項
具体的には、定款に、「以下のすべての要件を満たした場合に、法第45条5項により一部免除ができるとされている額を限度として、理事会の決議によって免除することができる」と定めることとなります。

  • 役員の任務懈怠の責任であること
  • 役員が職務を行うにつき善意かつ重大な過失がないこと
  • 責任の原因となった事実の内容、当該役員の職務の執行の状況その他の事情を勘案して特に必要と認めるときであること

なお、理事の責任を限定する旨の定款変更である場合には総会提出前に、責任の免除を理事会で決議するときには理事会提出前に、各監事の同意を得る必要があります。(法第45条7項同条9項会社法426条2項

責任限定契約

監事による任務懈怠行為がなされる前に、定款において、監事と組合との間で責任限定契約を締結できる旨を定めておくことが可能です。(法第45条9項会社法第426条同法第427条1項
具体的には、定款に「監事の任務懈怠責任について、監事が職務を行うにつき善意かつ重大な過失がないときは、定款で定めた額の範囲内であらかじめ組合が定めた額と最低責任限度額(法第45条5項において一部免除をすることができないとされている額)とのいずれか高い額を限度として監事が賠償責任を負う旨の契約を組合との間で締結することができる」と定めることとなります。

第三者に対する損害賠償責任

役員は、組合以外の第三者とは委任関係にありません。しかしながら、一定の場合には、第三者保護の見地から、第三者に対しても損害賠償責任を負います。(法第46条

ここでいう「第三者」には、組合も含まれると解されています。

虚偽記載等による責任

虚偽の情報開示はそれを信頼した第三者を害する危険が大きいため、理事、監事はそれぞれ以下の行為をしたときは、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負うこととされています。責任を負うべき理事または監事が虚偽の記載等をしたことについて注意を怠らなかったことを証明しない限り、責任を免れることはできません。(法第46条2項

・理事(法第46条第2項第1号
以下の①~③の行為

① 決算関係書類に記載し、又は記録すべき重要な事項についての虚偽の記載又は記録
② 虚偽の登記
③ 虚偽の公告

・監事(法第46条第2項第2号
 監査報告に記載し、又は記録すべき重要な事項についての虚偽の記載又は記録

悪意または重大な過失による責任

上記の場合に限らず、役員がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があり、これによって「第三者」(組合を含む)に損害が生じたときは、第三者に対する損害賠償責任を負います。(法第46条1項

▶︎参照:Q 役員の第三者に対する損害賠償責任とは何ですか?

補償契約
補償契約の内容の決定

組合と役員との間で、役員に対して以下の費用等の全部又は一部を当該組合が補償することを旨の契約(補償契約)をすることができます。その際、補償契約の内容の決定には、理事会の決議が必要です。(法第48条1項

  1. 当該役員が、その職務の執行に関し、法令の規定に違反したことが疑われ、又は責任の追及に係る請求を受けたことに対処するために支出する費用
  2. 当該役員が、その職務の執行に関し、第三者に生じた損害を賠償する責任を負う場合における次に掲げる損失
    ・ 当該損害を当該役員が賠償することにより生ずる損失
    ・ 当該損害の賠償に関する紛争について当事者間に和解が成立したときは、当該役員が当該和解に基づく金銭を支払うことにより生ずる損失

ただし、補償契約の当事者となる理事は補償契約の内容を決定する理事会決議について特別の利害関係を有するため、議決に加わることができません。(法第40条2項
複数の役員について補償契約を締結する場合は、個別の補償契約毎に決議を行うことが考えられます。

補償することができないもの

組合が補償できる範囲には一定の制限があります。(法第48条第2項
例えば、役員がその職務を行うにつき悪意または重大な過失があったことにより第三者に対する損害賠償責任を負う場合に生じた賠償金と和解金については、補償契約の内容にかかわらず、組合が補償することはできません。

Q決算はどうするの

決算

決算関係書類等の監査等

組合が安全に事業活動を行うためには、決算関係書類等(法第51条2項)、会計帳簿(法第52条1項)を適法に作成する必要があります。組合の設立は準則主義をとっており、行政庁の関与は限定的であることから、会計等における組合活動の透明性を図ることは大変重要であるからです。

決算関係書類等の作成等

組合は、各事業年度に係る決算関係書類等を作成し(法第51条2項)、監事の監査を受け(法第51条5項)、理事会及び総会の承認を受けなければなりません(法第51条6項・8項)。決算関係書類等を5年間主たる事務所に備え置くとともに(法第51条10項)、組合の債権者等は、その閲覧等の請求を行うことができます(法第51条12項)。

会計帳簿の作成等

組合は、適時に、正確な会計帳簿を作成し(法第52条1項)、10年間保存しなければなりません(法第52条2項)。一定の要件を満たす組合員は、組合に対して会計帳簿の閲覧等を請求すること ができます(法第52条3項

Q組合員監査会って何

組合員監査会

組合員監査会

組合員の総数が20人を超えない組織に限り、監事を置かない代わりに、理事以外の全ての組合員で組織する「組合員監査会(監査会)」を設け(法第54条1項)、理事の職務執行を監査することができることとしています(法第54条3項)。

▶︎参照:Q 労働者協同組合にはどのような機関が置かれるのですか?

制度の趣旨

組合の適切な運営を確保するためには理事の職務執行を監査することは重要であり、この役割を果たす者として監事が置かれます(法第38条2項)。そして、監事は、監査対象である理事からの独立性を確保するため、理事や組合の使用人との兼職ができません(法第43条)。

一方で、特に小規模の組合において、全員がその理事又は使用人として営業や日常事務などの組合の活動に従事したいというニーズがあります。しかし、監事の兼職禁止のため、監事になることでこれらの活動に従事することができなくなる組合員が出ることになります。

このような小規模の組合のニーズに応えるために、組合の基本原理を踏まえ、理事の活動をほかの組合員がチェックできるような規模の組合であれば、各組合員による監査という仕組みを設けることも合理的であるという考え方の下に、組合員監査会制度が設けられました。

概要

監査会を組織する組合員(監査会員)は、3人以上でなければなりません(法第54条2項)。これは、理事の定数が3人以上であることを踏まえ(法第32条2項)、監査を行う組合員側と監査を受ける理事側との数的な均衡を図る趣旨です。監査会では、馴れ合い的な監査となることを防止するため、監査結果として監査報告を作成し(法第54条3項)、一定期間事務所に備え置かなければなりません(法第57条1項)。監査会での決議は、監査会員の過半数で行い(法第55条1項)、議事録を作成する義務があります(法第55条4項)。

そのほか、監査会員には、①理事会における意見陳述(法第56条1項)、②報酬請求(法第56条2項)、③費用償還・債務弁済請求(法第56条3項)等が認められています。また、組合は、監査の独立性を確保するため、監査会員に対し、監査会の職務執行に関する業務上の命令等を行ってはなりません(法第56条4項)。

Q総会や総代会はどんなふうに行うの

総会・総代会

総会

総会は、組合員の意見を反映した事業の運営という組合の基本原理を具体化する機関であり、組合における最高意思決定機関です。

▶︎参照:Q 労働者協同組合にはどのような機関が置かれるのですか?

総会の招集

総会の種類には、①通常総会、②臨時総会があります。①は、毎事業年度一回招集しなければなりません(法第58条)。これに違反した場合には、罰則が課せられます(法第136条1項16号)。②は、必要があるときはいつでも招集することができます(法第59条1項)。また、組合員が総組合員の5分の1以上の同意を得て総会の招集を請求する場合には、理事会は20日以内に臨時総会を招集しなければなりません(法第59条2項)。

総会の招集は、会日の10日前までにする必要があります(法第61条1項)。ただし、組合員全員の同意があるときは、招集手続を経ることなく開催することができます(法第61条3項)。

総会の議決事項

総会の議決を経るべき事項として、定款の変更などの6項目が法定されています(法第63条1項)。

このうち、「労働者協同組合連合会の加入・脱退」(法第63条1項5号)について総会の議決を経るべきとしたのは、労働者協同組合法における連合会が組合等によって自由に設立されるものであることを踏まえ、どの連合会に加入するかについて各組合における意思決定を重視する趣旨です。

▶︎参照:Q 総会ではどのようなことを決めるのですか?

総会の議事

総会の議事は、原則として出席者の議決権の過半数で決されますが(法第64条1項)、定款変更、解散、除名等の重要な事項については、総組合員の半数以上の出席及びその議決権の3分の2以上の多数による議決(特別議決)を要します(法第65条)。

▶︎参照:Q 総会ではどのようなことを決めるのですか?

報告義務

組合員から求められた場合の理事及び監事の説明義務とは別に、理事が総会において報告すべき事項として、次の2つの事項が定められています。

意見反映に係る事項

理事は、各事業年度に係る組合員の意見を反映させる方策の実施の状況及びその結果を通常総会に報告しなければなりません(法第66条1項)。これに違反した場合には、罰則が課せられます(法第136条1項17号)。前述のとおり、組合の基本原理の一つである意見反映原則を担保するため、「組合員の意見を反映させる方策」は定款に記載しなければならない事項とされていますが、この方策に基づき組合員それぞれが出した意見がどのように反映されたかを全ての組合員が確実に共有することができるようにする趣旨です。

組合員全体の労働条件に係る事項

理事は、就業規則の作成等があったときは、その内容をその事由が生じた日後最初に招集される総会に報告しなければなりません(法第66条2項)。これに違反した場合には、罰則が課せられます(法第136条1項17号)。組合においては、代表理事、専任理事及び監事を除き、組合の業務に従事する組合員は組合と労働契約を締結することとされており(法第20条1項)、就業規則の作成等は組合員にとって重大な関心事項です。そこで、これがあった場合には、組合員への周知の徹底を図るため、総会への報告を義務付けることとしました。なお、この規定に基づく報告により、 就業規則等の周知義務(労働基準法第106条1項)を免除する趣旨ではありません。

総代会
設置

組合員の総数が200人を超える組合は、定款で定めるところにより、総会に代わるべき総代会を設けることができます(法第71条1項)。総会は、全組合員が出席し、議決権や選挙権を行使することのできる重要な機関ですが、多数の組合員がいる組合については、会場の確保など物理的に開催が困難な場合も想定されることに鑑み、総会に代わる意思決定の場を設けることを可能にするものです。

▶︎参照:Q 労働者協同組合にはどのような機関が置かれるのですか?

総代の選任・定数

総代は、組合員のうちからその住所等に応じて公平に選挙されなければなりません(法第71条2項)。住所は地理的な公平性を示すものであり、他には、例えば組合が複数の事業を行っている場合には各事業の従事者が総代になることが望ましいと考えられます。

総代の定数は、その選挙の時における組合員の総数の10分の1(組合員の総数が2千人を超える組合にあっては200人)を下ってはならないとされています(法第71条3項)。定数の下限を定める一方で、総代の人数が多くなりすぎると総会と同様の問題が生じることが想定されることから、総代会を設けることができる組合員の総数を超えない範囲にとどめたものです。

権限

総代会は、原則として、総会と同等の権限を有します(法第71条6項)。ただし、総代の選挙を行うことはできないほか、組合の解散又は合併等の重要事項について議決することはできません(法第71条7項)。

Q剰余金はどのように使えばいいの?

計算

準備金

組合の健全な運営を確保するため、組合は、毎事業年度の剰余金の10分の1以上を準備金として積み立てなければなりません。その額は、出資総額の2分の1を下回ってはならず、損失の塡補に充てる場合を除き、取り崩してはなりません(法第76条1項から3項まで)。これに違反した場合には、罰則が課せられます(法第136条1項20号)。

就労創出等積立金・教育繰越金

組合が継続して活動し発展していくためには、更なる事業拡大や人材の育成が必要です。そこで、そのための資金として、①就労創出等積立金、②教育繰越金を確保することを義務付けています。

①就労創出等積立金(法第76条4項)は、組合の事業規模や事業活動の拡大を通じた就労の機会の創出を図るため、毎事業年度の剰余金の20分の1以上を積み立てておくものです。中長期的な視点に立ち、将来事業を拡大する際の原資として用いることが想定されます。

一方、②教育繰越金(法第76条5項)は、組合員の組合事業に関する知識の向上を図るため、毎事業年度の剰余金の20分の1以上を翌事業年度に繰り越しておくものです。労働者協同組合法では、地域のために働きたいと考える者が各自のライフスタイルに合った多様な働き方を選択することを認めており(法第1条)、それぞれの働き方に合った教育を行うために設けられました。いわば、就労創出等積立金は「事業づくり」のための資金、教育繰越金は「人づくり」のための資金であるといえます。

剰余金の配当

組合の健全な運営を確保するため、組合は、損失を塡補(てんぽ)し、準備金・就労創出等積立金・教育繰越金を控除した後でなければ、剰余金の配当をしてはなりません(法第77条1項)。配当については、組合の非営利性が損なわれないよう、出資配当を禁止し、組合員が組合の事業に従事した程度に応じた配当、つまり、「従事分量配当」のみを可能としています(法第77条2項)。

組合の事業に従事した程度の具体的な評価に当たっては、日数、時間等が主な要素となりますが、業務の質や責任の軽重なども考慮されるものと考えられます。

労働者協同組合の解散等

Q解散するときはどうするの?

解散

組合の解散

組合は、①総会の決議、②組合の合併、③組合についての破産手続開始の決定、④存続期間の満了・解散事由の発生、⑤行政庁による解散命令(法第127条3項)によって解散します(法第80条1項)。組合員が3人未満になり、その状態が6月間継続した場合にも、解散することになります(法第80条2項)。

なお、①総会の決議、④存続期間の満了・解散事由の発生により解散したときは、解散から2週間以内に、その旨を行政庁に届け出る必要があります(法第80条3項)。

▶︎参照:Q 組合の解散にはどのようなケースがあるのでしょうか?

休眠組合

組合に関する登記が最後にあった日から5年を経た「休眠組合」については、行政庁に事業を廃止していない旨の届出をすべき旨を公告したにもかかわらず、その届出をしないときは、解散したものとみなされます(法第81条)。これは、設立に当たって準則主義がとられていることの弊害を防ぐ趣旨です。

特定労働者協同組合

Q特定労働者協同組合って何?

特定労働者協同組合の認定制度

特定労働者協同組合

 特定労働者協同組合とは、労働者協同組合法等の一部を改正する法律(令和4年法律第71号)により設けられた新しい類型の労働者協同組合です。

 労働者協同組合のうち、非営利性を徹底した組合であることについて都道府県知事の認定を受けた組合のことで(法第94条の2)、税制上の措置が講じられています。

 認定を受けるためには一定の基準に適合する必要があります。(法第94条の3)

① 定款に、剰余金の配当を行わない旨の定めがあること。

② 定款に、解散時に組合員に出資額限度で分配した後の残余財産は国・地方公共団体・他の特定労働者協同組合に帰属する旨の定めがあること。

③ ①②の定款違反行為を行うことを決定し、又は行ったことがないこと。

④ 各理事の親族等の関係者が理事の総数の3分の1以下であること。

認定を受けようとする労働者協同組合は、定款、役員名簿等の書類を添付した申請書を都道府県知事に提出しなければなりません(法第94条の5)。なお、欠格事由として一定の事由に該当する労働者協同組合は、認定を受けることができないことになっています(法第94条の4)。

欠格事由

 認定基準を満たす場合でも、欠格事由として一定の事由に該当する労働者協同組合は、認定を受けることができないことになっています(法第94条の4)。

① その役員のうちに、次のいずれかに該当する者がある組合

  • 過去に特定労働者協同組合の認定が取り消されていて、その原因となった事実があった日以前1年以内に当該特定労働者協同組合の理事であった者で、その取消の日から2年を経過しないもの
  • 労働者協同組合法等に違反し、罰金刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
  • 禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又は刑の執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
  • 暴力団の構成員等

② 過去に特定労働者協同組合の認定を取り消され、その取消しの日から2年を経過しない組合

③ 定款の内容が法令又は法令に基づく行政庁の処分に違反している組合

④ 次のいずれかに該当する組合

  • 暴力団
  • 暴力団又は暴力団の構成員等の統制の下にあるもの

Q特定労働者協同組合の事業や運営などに制限はあるの?

特定労働者協同組合の事業・遵守事項・名称使用

特定労働者協同組合の事業

特定労働者協同組合であっても通常の組合と同じで、組合が行うことのできる事業について、労働者派遣事業以外には制限はありません。ただし、許認可等が必要な事業についてはその規制を受けます。(法第7条

特定労働者協同組合の遵守事項

特定労働者協同組合は、通常の労働者協同組合に適用される規則に加えて、次の事項を遵守しなければなりません。

① 特定労働者協同組合は、剰余金の配当をしてはならないこと(法第94条の15)。

② 特定労働者協同組合は、毎事業年度初めの3月以内に、以下の書類(=報酬規程等)を作成し、主たる事務所に5年間、従たる事務所に写しを3年間、備え置かなければならないこと(法第94条の12)。

  • 前事業年度の特定労働者協同組合の事業に従事する者に対する報酬及び給与の支給に関する規程
  • 前事業年度の役員名簿(役員の氏名及び住所を記載した名簿をいう。)
  • 役員に対する報酬の支給の状況
  • 給与を得た職員の総数及び当該職員に対する給与の総額に関する事項

③ 特定労働者協同組合は、報酬規程等、定款、貸借対照表又は損益計算書の閲覧の請求があった場合には、正当な理由がある場合を除いて、これを閲覧させなければならないこと(法第94条の12第5項)。

④ 特定労働者協同組合は、毎事業年度1回、報酬規程等を行政庁に提出しなければならないこと(法第94条の13)。

⑤ 都道府県知事は、特定労働者協同組合から提出を受けた報酬規程等、貸借対照表若しくは損益計算書(過去五年間に提出を受けたものに限る。)又は定款について閲覧又は謄写の請求があったときは、これらの書類(役員名簿については、これに記載された事項中、個人の住所に係る記載の部分を除いたもの)を閲覧させ、又は謄写させなければならないこと(法第94条の14)。

⑥ 特定労働者協同組合は、外部監事を置かなければならないこと。

また、監事の代わりに組合員監査会を設置することができる規則は、特定労働者協同組合には適用されません(法第94条の11)。

⑦ 解散時の残余財産の分配は以下のとおりに行うこと(法第94条の17)。

ア 解散した特定労働者協同組合の清算人は、特定労働者協同組合の債務を弁済してなお残余財産があるときは、これを組合員に対し、その出資額を限度として、出資口数に応じて分配しなければなりません。

イ アによる分配の結果なお残余財産がある場合、その財産は、定款で定めるところにより、国若しくは地方公共団体又は他の特定労働者協同組合に帰属します。

ウ ア・イにより処分されない財産は、国庫に帰属します。

特定労働者協同組合の名称の使用制限

特定労働者協同組合でない者は、その名称中に特定労働者協同組合であると誤認されるおそれのある文字を用いてはなりません(法第94条の7)。

特定労働者協同組合である者が、その名称中に「特定労働者協同組合」を用いるかどうかは組合の判断に委ねられており、組合は「労働者協同組合」の名称を必ず使用しなければならないことを定めた法第4条とは異なります。

Q特定労働者協同組合の認定はどのような場合に取り消されるの?

特定労働者協同組合の認定取消

認定取消

都道府県知事は、特定労働者協同組合が次のいずれかに該当するときは、認定を取り消さなければなりません。(法第94条の19第1項)

① 欠格事由のいずれかに該当するに至ったとき。

② 偽りその他不正の手段により認定を受けたとき。

③ 剰余金の配当の禁止、残余財産の分配等を遵守していないとき。

④ 正当な理由がなく、法第127条第1項又は第2項の規定による命令に従わないとき。

⑤ 特定労働者協同組合から認定の取消しの申請があったとき。

  

都道府県知事は、特定労働者協同組合が次のいずれかに該当するときは、認定を取り消すことができます。(法第94条の19第2項)

① 認定基準のいずれかに適合しなくなったとき。

② 書類の作成、備置き、提出及び公開・外部監事の設置義務等を遵守していないとき。

③ ①・②のほか、法令又は法令に基づく行政庁の処分に違反したとき。

Q労働者協同組合法等の一部を改正する法律(令和4年法律第71号)って何?

改正法・税制上の措置

労働者協同組合法等の一部を改正する法律

令和3年12月に閣議決定された「令和4年度税制改正大綱」のうち労働者協同組合法に関する部分には、「労働者協同組合法の改正を前提に、剰余金の配当が行われないこと、解散時の残余財産について組合員からの出資額を超える金額が国等又は同種の法人へ帰属すること等が担保された労働者協同組合(以下「特定組合」という。)が創設される場合には、特定組合について、各事業年度の所得のうち収益事業から生じた所得以外の所得について非課税とするほか、公益法人等の軽減税率及び寄附金の損金不算入制度を除き、公益法人等に係る取扱いを適用する。」と記載されました。

これを受けて、労働者協同組合法等の一部を改正する法律案が、議員立法として、国会に提出され、成立し、令和4年6月17日に公布されました。 改正法により設けられた特定労働者協同組合の認定制度等の内容については、以下をご確認ください。

▶︎参照:Q特定労働者協同組合って何?
▶︎参照:Q特定労働者協同組合の事業や運営などに制限はあるの?

税制上の措置

法人税法上の公益法人等として取り扱われる特定労働者協同組合の主な税制上の措置は以下のとおりです。

なお、通常の労働者協同組合は法人税法上の普通法人として取り扱われます。

  • 法人税について、各事業年度の所得のうち収益事業から生じた所得以外の所得について非課税となること。
  • 出資金の額が1千万円を超えると税率が上がる法人住民税均等割について、出資金の額にかかわらず最低税率が適用されること。
  • 出資金の額が1億円を超える普通法人に適用される法人事業税外形標準課税について、非課税となること。
  • 公益法人等の軽減税率及び寄附金の損金不算入制度については適用されず、普通法人と同様の扱いとなること。

その他(連合会/行政庁による監督/指針の策定)

他の労働者協同組合と一緒に連合会をつくりたいのですが。

連合会・監督・指針

労働者協同組合連合会

労働者協同組合連合会(連合会)は、個別の労働者協同組合又は他の連合会を会員とします(法第99条)。その事業は、会員の指導、連絡及び調整に関する事業であり(法第100条)、個別の労働者協同組合のように、実際の事業を行うものではありません。これに違反した場合には、罰則が課せられます(法第136条1項26号)。事業の具体例としては、財務会計、労務管理等に係る統一ひな形の作成、共通のロゴマークの作成、組合制度の発展のためのセミナー開催などが想定されます。

連合会は、出資連合会か非出資連合会かを選択し、出資連合会であれば会員に出資をさせることができます(法第105条1項)。なお、出資連合会における剰余金の配当は、利用分量の割合に応じて行われます(利用分量配当。法第121条2項)。連合会の役員は、5人以上の理事、2人以上の監事であり(法第114条)、連合会の機関は、理事会(法第116条)、総会(法第119条)とされています。連合会は、総会の決議、解散の命令、会員がいなくなったこと等の場合に解散します(法第122条)。

行政庁による監督

所管行政庁は、組合についてはその主たる事務所の所在地を管轄する都道府県知事、連合会については厚生労働大臣とされています(法第132条)。そして、組合・労働者協同組合連合会の経営の健全化や法令遵守態勢の確保のため、①組合・連合会は毎事業年度、決算関係書類等を行政庁に提出しなければならないほか(法第124条)、行政庁は、②報告の徴取(法第125条)、③検査等(法第126条)を行うことができます。

さらに、法令等の違反に対する処分として、①措置命令、②業務停止・役員改選命令、③解散命令を行うことができます(法第127条)。

指針の策定

厚生労働大臣は、組合・連合会の適正な運営に資するため、必要な指針を定め、指針を策定・変更をしたときには公表します。また、指針を策定・変更をしようとするときは、あらかじめ、 関係行政機関の長に協議するとともに、労働政策審議会の意見を聴く必要があります(法第130条)。

指針の具体的な内容としては、①組合員は事業者ではなく労働者であることを明確にするための事項、②役員の数についての考え方、③労働者協同組合が労働者としての権利を尊重した上で事業を展開していくことを明確にする観点からの事項、④従事分量配当の在り方などです。

附則関係

いつ施行されるの?

施行・特例

施行期日

労働者協同組合法の施行期日は、公布の日(令和2年12月11日)から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日とされています(附則第1条)。これは、組合員監査会のような既存の法人制度にはない新たな仕組みを設けていること等を勘案して、円滑な施行が可能となるよう、必要な準備期間がとられたものです。そして、労働者協同組合法の施行日政令により、令和4年10月1日に施行するとされました。

特定就労継続支援を行う組合の特例

労働者協同組合は、組合員が自ら事業に従事することを基本原理の一つとして掲げる一方で、実際の事業活動における臨時的な労働力の必要性を勘案して、組合の事業活動に柔軟性を持たせる観点から、組合の行う事業に従事する者の総数に占める組合員の数の割合が4分の3以上でなければならないこととしています(法第8条2項)。

障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく就労継続支援A型事業を実施する組合においても、就労継続支援に従事する従業者と、就労継続支援を受けて生産活動等に従事する事業の利用者とがともに「組合の行う事業に従事する者」に該当し、この4分の3以上の要件において算定の対象となります。その結果、利用者であって労働者協同組合の組合員でない者の人数が事業従事者の4分の1を超えることができず、就労継続支援の利用が実質的に制限されることとなります。

しかし、既に労働者協同組合の基本原理に沿って就労継続支援A型事業が行われている実態があること等を勘案し、就労継続支援A型事業の利用者については、当分の間、事業従事者に関する人数要件において算定の対象とはしないこととしました(附則第3条)。

なお、国会審議において、この規定の趣旨は、 労働者協同組合においても就労継続支援A型事業が滞りなく行えるよう、あくまで法第8条2項の規定に関する計算上の扱いを定めるものであり、障害者を差別するような性質のものではないことが強調されています。

企業組合・NPO法人から組織変更したいのですが。

組織変更

企業組合・NPO法人からの組織変更
制度の趣旨

労働者協同組合法が施行された後、労働者協同組合として事業を行うことが見込まれる団体の中には、現在、企業組合・NPO法人の形態をとって活動しているものがあります。仮に、企業組合・NPO法人からの組織変更の規定を整備しないとすれば、それらの団体は、いったん解散・清算した上で労働者協同組合を新設する必要があり、従前に締結されていた契約の扱いや保有する財産の処分など、事業の継続に重大な影響が及ぶことが想定されます。そこで、労働者協同組合法では、これら現に活動する企業組合・NPO法人が、労働者協同組合に円滑に組織変更を行うための制度を設けています。

▶︎参照:現に活動する企業組合又はNPO法人に認められている労働者協同組合への組織変更とはなんですか。

▶︎参照:労働者協同組合と他の法人組織との違いについて教えてください。

期限

組織変更については、現在企業組合・NPO法人の形態をとって活動している団体にのみ適用する暫定的な措置とし、組織変更ができる期間は施行日から三年以内に限ることとしています(附則第4条)。

手続

企業組合・NPO法人から労働者協同組合への組織変更に関する主な手続は、次のとおりです。

組織変更計画の作成・承認

企業組合・NPO法人は、組織変更計画を作成し、総会(企業組合)又は社員総会(NPO法人)の特別議決により、その承認を受けなければなりません(附則第5条1項・2項附則第16条1項・2項)。

組織変更計画には、組織変更に対する賛成・反対の判断に資するよう、①組織変更後の労働者協同組合(以下「組織変更後組合」という)の事業、名称、事務所所在地等の定款記載事項、② 組織変更後組合の理事及び監事の氏名(組織変更後組合が組合員監査会を設置する場合にはその旨)、③組織変更をする企業組合の組合員が組織変更に際して取得する組織変更後組合の出資の口数又はその口数の算定方法、④組織変更の効力発生日、といった事項の記載を義務付けています(附則第5条4項附則第16条4項)。

債権者異議・反対組合員持分払戻請求権

組織変更により関係者が不測の損害を被ることのないよう、組織変更に異議・反対のある関係者を保護するための手続が設けられています。すなわち、組織変更の議決を行った企業組合・NPO法人の債権者は、一定の期間内に組織変更について異議を述べることができ、異議があった場合には、組織変更をする企業組合・NPO法人は、当該組織変更をしても当該債権者を害するおそれがない場合を除き、当該債権者に弁済等をしなければならないとしています(附則第6条2項6項附則第19条)。

債権者異議手続が終了していない場合や組織変更を中止した場合には、組織変更の効力は発生しませんので着実に実施する必要があります(附則第11条3項附則第19条)。

また、組織変更のための総会に先立って書面で組織変更に反対の意思を通知した企業組合の組合員は、組織変更の議決の日から20日以内に書面をもって持分の払戻しを請求することにより、効力発生日に当該企業組合を脱退するとともに、持分の全部の払戻しを請求することができます(附則第7条1項・2項)。

出資の割当て・払込み

企業組合からの組織変更の場合には、組織変更計画の定めるところにより、組織変更をする企業組合の組合員の出資口数に応じて、組織変更後組合の組合員に出資を割当てることとしています。
一方、企業組合と異なり、NPO法人に対する出資は認められていません。そのため、組合員による出資を基本原理の一つとする労働者協同組合に組織変更するに当たり、新たに組合員となる者に対し、労働者協同組合の新設時と同様に出資を行わせる必要があります。そのため、組織変更計画が承認されたときは、遅滞なく、出資の第一回の払込みをさせなければならないこととしています(附則第17条1項)。

組織変更登記

効力発生日から2週間以内に、法務局へ企業組合・NPO法人の解散登記と労働者協同組合の設立登記の申請をする必要があります。

行政庁への届出

企業組合・NPO法人と労働者協同組合とでは所管する行政庁が異なることから、①組織変更前の行政庁(企業組合・NPO法人を管轄する行政庁)に対しては組織変更をした旨の届出を、②組織変更後の行政庁(労働者協同組合を管轄する行政庁)に対しては組合設立の届出を、それぞれ行わなければならないこととしています(附則第12条附則第19条)。

①については遅滞なく、②については効力発生日から2週間以内に、届出が必要です。

▶︎参照:NPO法人、企業組合から移行する場合の期間はどのぐらいかかりますか。
▶︎参照:NPO法人、企業組合から組織変更した後、これらの法人を所管していた行政庁には何か届け出る必要はありますか。
▶︎参照:NPO法人、企業組合から組織変更する場合の留意点はありますか。

組織変更の効果

組織変更をする企業組合・NPO法人は、組織変更の効力発生日に、労働者協同組合となります(附則第11条1項附則第19条)。組織変更をする企業組合の組合員・NPO法人の社員は、組織変更の効力発生日に、組織変更後組合の組合員となります(附則第11条2項附則第19条)。

ただし、債権者異議手続が終了していない場合や組織変更を中止した場合には、組織変更の効力は発生しません(附則第11条3項附則第19条)。

NPO法人からの組織変更に係る特別な規律
特別な規律を設けた趣旨

NPO法人は、その財産を構成員に分配することができないのに対して、労働者協同組合は、分配可能であるという大きな違いがあります。NPO法人からの組織変更に当たっては、「NPO法人から組織変更した労働者協同組合」が保有するNPO法人時代からの財産を適切に管理するという観点から、NPO法人と同様に構成員に対する分配制限を及ぼす必要があります。一方で、組織変更後の組合が従前と同じ事業その他のNPO活動に該当する事業を行っている場合の財産使用への配慮が必要となります。

そこで、「NPO法人から組織変更した組合」 については、社員総会での特別多数による議決など、企業組合からの組織変更と同様の規定に加えて、①財産分配の規制、②NPO法人時代から保有する財産のNPO活動に該当する事業への使用について、実体・手続の両面から規律を及ぼすこととしています。

特別な規律の内容

■組織変更時財産額の定款への記載

組織変更時財産額(NPO法人が効力発生日に解散するものとした場合において国への譲渡等を行うべきものとされる残余財産の額として算定した一定の額)について、定款に記載し又は記録することになっています(附則第18条)。

■行政庁の確認

剰余金のうち組織変更時財産額に係るものについては、特定非営利活動に係る事業に該当する旨の行政庁の確認を受けた事業によって生じた損失の補填に充てる場合のほか、使用してはなりません(附則第21条)。

例えば、確認に係る事業以外の損失を補填したり、従事分量配当の原資としたりすることはできません。
また、確認に係る事業以外の事業も行う場合には、損益計算書を区分して作成するとともに、剰余金の処分においては、確認に係る事業以外の事業で生じた利益を、確認に係る事業の赤字填補に充てることとされていることにも注意する必要があります。
この場合、NPO法人が、組織変更時に持っていた財産(現金、自動車、事務用機器、不動産など)は、労働者協同組合に引き継がれ、これらの財産については、労働者協同組合として実施する事業に使用することができます。(確認に係る事業と確認に係る事業以外の事業の両方に使用可能)。
ただし、毎事業年度が終了した後に、組織変更時財産額、組織変更時財産残額を行政庁へ報告する必要があります。

組合が解散した場合の財産の帰属

解散した組合の残余財産のうち組織変更時財産残額(組織変更時財産額から行政庁の確認を受けた事業に係る損失塡補額の合計額を控除して得た額)に相当するものは、NPO法人等に帰属させなければなりません(附則第24条)。

財産の使用状況の報告

毎事業年度終了後、組織変更時財産額に係る使用の状況を行政庁に報告しなければなりません(附則第23条)。

運用上の留意

NPO法人時代の財産がNPO法人と同じ趣旨で使用されるべきものであることを明確にする観点から、関係規定の運用に当たっては、 NPO法の精神にのっとり、組織変更後組合による組織変更時財産に係る使用が公益の増進に寄与するよう留意しなければならない旨の留意規定が設けられています(附則第27条)。

Q法が施行されたら、その後どうなるの?

施行後の検討

検討

労働者協同組合が新たな法人制度であることから、施行後5年を目途として、施行状況等を勘案して検討を行い、その結果に応じて必要な措置を講ずることとしています(附則第32条)。