労働者協同組合うんなん(令和6年2月設立)

「最期まで暮らせる鍋山」を目指して
「一人でも良い!!喜んでくれる人たちのために」

労働者協同組合うんなんは、小規模多機能自治を推進する島根県雲南市の地域自主組織「躍動と安らぎの里づくり鍋山」(任意団体)から、その事業の一部を切り出す形で設立されました。草刈り、除雪、見守りを兼ねた水道検針確認や電気メータの調査、交通弱者への移送支援事業、地域の学童クラブの管理、温泉施設の指定管理などの多様な事業に取り組んでいます。

これまでの活動の経緯

地域の多様なニーズに、一つひとつ対応を重ね、
地域自主組織の活動が拡大

本法人が所在する島根県雲南市は、2004年(平成16年)11月に6町村による新設合併で誕生しました。

島根県雲南市は全地域が過疎地域に指定されており、1970年代には5万人を超えていた人口が現在では4万人を割り込んでおり、人口減少と少子高齢化が進んでいます。

その中でも、雲南市三刀屋町鍋山地区は、2024年4月現在、世帯数約380戸、人口約1200人、高齢化率48%の少子高齢化が進む地域です。今後約30年後には、世帯数160戸、高齢化率65%になることが見込まれています。

同市では、こうした人口減少と少子高齢化に加え、合併による広域化と行政の限界を踏まえ、多様な主体によるまちづくりや全域での地域の主体性発揮の観点から、小規模ながらも様々な機能をもった住民自治の仕組みである小規模多機能自治を推進することとし、合併翌年から数年間でおおむね小学校区ごとに地域自主組織が設立されていきました。

「躍動と安らぎの里づくり鍋山」(以下「躍動鍋山」)は、その地域自主組織の一つとして、2006年に設立されました。

躍動鍋山は、「全ての住民が活き活きと躍動し、安全で安心して生涯を輝き暮らせる地域づくり」を目標として、公民館・自治会・福祉委員会・体育協会・まちづくりグループ・老人クラブ・小学校・PTA・消防団・交通安全協会・郵便局など、多種多様な団体が参加して設立された任意団体です。

設立以来、各組織が連携しながら地区内の様々な課題の解決と活動の進展に努めてきました。

「必要とされることはなんでもやろう」という想いのもと、地域のニーズに促されるまま活動を展開していくうち、躍動鍋山の手がける事業はどんどん拡大していきました。

<躍動鍋山の主な事業変遷>

・平成24年4月

水道検針事業

・平成24年12月

除雪、草刈り、立木・竹伐採、農作業、大工、その他の軽作業

・平成29年6月

過疎地域等集落ネットワーク圏形成支援事業

・平成30年4月

旧・JA鍋山支所管理運営事業

・令和2年4月

市民活動促進補助事業(葬祭事業、就活支援事業)

・令和3年11月

自家用有償旅客運送事業(高齢者の移動手段支援)

・令和4年4月

休眠預金等活用助成事業

・令和2年10月

鍋山地区集落連携協議会事務局業務

・令和3年4月

深谷温泉施設の管理運営事業

・令和5年5月

農村RMO(農村型地域運営組織)形成支援事業

<躍動鍋山の主な事業変遷>

・平成24年4月水道検針事業
・平成24年12月除雪、草刈り、立木・竹伐採、農作業、大工、その他の軽作業
・平成29年6月過疎地域等集落ネットワーク圏形成支援事業
・平成30年4月旧・JA鍋山支所管理運営事業
・令和2年4月市民活動促進補助事業(葬祭事業、就活支援事業)
・令和3年11月自家用有償旅客運送事業(高齢者の移動手段支援)
・令和4年4月休眠預金等活用助成事業
・令和2年10月鍋山地区集落連携協議会事務局業務
・令和3年4月深谷温泉施設の管理運営事業
・令和5年5月農村RMO(農村型地域運営組織)形成支援事業

人と事業の拡大を願い、労働者協同組合として法人格を取得

事業が拡大するにつれ、予算規模の増加による運営上の負担、今後の担い手の確保、法人格を持たない任意団体は法人としての契約ができないなど、任意団体ではどうしても対応できない局面が増えてきました。

そこで、メンバー内から地域自主組織の事業部門を法人化する提案があり、メンバー内で法人化を検討することとなりました。

法人になれば事業運営が円滑に進められるだけでなく、活動範囲を「鍋山」に限定することなくより広範囲で多彩な事業の担い手を受け入れることが可能になります。

年々拡大していく事業規模にふさわしい組織形態についてメンバー間で模索と検討を重ね、また、小規模多機能自治推進ネットワーク会議のつながりで交流があった日本労働者協同組合連合会や雲南市役所の関係者と何度も検討を重ね、「労働者協同組合うんなん」を設立しました。

多岐にわたる地域自主組織の事業部門を切り出して労働者協同組合に

労働者協同組合は、地域の様々な需要に応じた事業に対応が可能なうえ、法人として契約が可能になることで活動の範囲や規模を広げることができます。

当時、任意団体である地域自主組織、躍動鍋山では、地域の要望に応える形で26の事業が進行していましたが、その中でも事業性が高く、地域内外で広く推進すべき以下の事業を労働者協同組合うんなん(以下「労協うんなん」)に移行し、躍動鍋山と連携を図りながら取り組むことにしました。

<躍動鍋山から労協うんなんに移行した事業>

  • 温泉等の施設管理/運営事業(雲南市からの指定管理)
  • 地域の困りごとサポート事業(除雪、草刈、伐採、農作業、剪定、障子張替、大工、左官、墓掃除、その他軽作業など)
  • 農業団体/組織からの業務受託事業(躍動鍋山の農村RMO事業と連携で、農用地保全、地域資源活用、生活支援の作業支援)
  • 自治体からの業務受託事業
  • 住民移動支援事業(躍動鍋山の交通空白地自家用有償旅客運送事業との連携)
  • 水道検針事業(市上下水道局から受託)
  • 清楚な葬祭事業
  • 終活支援事業
  • 農特産品の集出荷・加工・販売事業
  • 農林水産にかかる作業受託、加工・販売事業
  • 生活用品等の販売事業
  • 事務処理代行事業
  • 貨物自動車運送事業
  • 家屋等の改修及び修繕事業
  • 土木及び建設関連業務受託事業
  • 古物及び中古物品等の回収及び売買事業
  • サービス事業及び関連業務の受託事業
  • 深谷温泉ふかたに荘の管理運営(雲南市から指定管理)
  • 同施設での「日曜市」

活動に当たり大事にしていること(意見反映の方法等)

住民が自ら活動することで生まれる「気づき」を原動力に

高齢化の進む鍋山地区では、地域の草刈りや冬場の除雪作業、移動手段など、年間を通じて暮らしの中で生じる小さな困りごとが数多くありました。労協うんなんの活動を担うのは、ほとんどが地域住民のため、地域の課題となる「困った」や「あったらいいな」は生活の中で実感することができます。そうした小さな気づきを次々と事業に反映していくことで、活動の幅と内容はどんどん深まっていきました。

  • 地域の困りごとサポート 雪かきの様子

例えば、雲南市上下水道局から受託している水道検針の際には「せっかく戸別訪問しているのだから」と、住民の皆様に積極的な声かけを実施しています。家々を訪ねる水道検針員が「まめなかね~(お元気ですか)」と声を掛ける「まめなか君の水道検針事業」は、高齢者の見守りや健康管理を守ることにつながりました。

また、冬に高齢者宅の雪かきを手伝ううち、雪かき応援だけでなく、竹伐採や庭木の剪定、お墓の掃除、障子張替やちょっとした大工仕事などをサポートするようになったり、「地域の困りごとサポート事業」は、こうした日常の小さな気づきや思いやりから生まれた事業です。

  • 水道検針事業(雲南市上下水道局から受託)

事業化の推進力となるのは、生活の中で生まれる小さな声です。労協うんなんでは、毎日の暮らしから生まれるこうした小さなニーズを大切にし、困ったことがあったら気兼ねなく声を掛け合える関係性を大切にしています。

互いの助け合いと事業への積極的な参加が
収入につながり、生きがいになる

地域の取組を事業として成り立たせるためには、地域住民の積極的な参加と達成感を高めることも重要です。

躍動鍋山から労協うんなんが受託している農用地保全・地域資源活用事業では、竹林の侵入対策とチップ化した竹の活用をめざし、竹チップ機を導入して土壌改良を行う実証実験に多くの住民が参加しています。

また、躍動鍋山と連携して、高齢者の多い地域ならではの終活や葬祭の課題にも取り組み始めました。葬祭に必要な祭壇の所有は任意団体の躍動鍋山が、葬儀は交流センターで行えるよう連携し、また組合員が終活ガイドの資格を取得して高齢者の終活支援をしながら地域の人々が活き活きと「最後まで暮らせる鍋山」を目指しています。

農特産品の集出荷・加工・販売事業では週4日の集出荷を実現しました。集荷や出荷を通じて高齢者の方々に声をかけ、住民同士が触れ合える機会を増やしています。高齢者の方々も、事業に参加することで収入を得ることができ、生きがいづくりの一助となりました。

  • 農産物の集出荷の様子

「躍動鍋山」メンバーと「労協うんなん」の組合員、
互いに力を合わせ、相談しながら事業を展開

任意団体の躍動鍋山では、地域運営組織として28の自治会の議決のもと支部長で執行機関をつくり役員で運営してきました。労働者協同組合を併設したこれからは、事業契約についても躍動鍋山と相談していく予定です。
また、運営に関しては、労協うんなんの組合員がみんなで話し合いながら進めていきます。

すべての働く人たちが主体となり、運営を担っていく。この原則を守ることで、これまで以上に地域の「気づき」を増やし、事業内容を深めていくことができるはずです。

活動に当たり生じた困難や課題、それに対する対応

地域自主組織と労働者協同組合、
協同と分担で地域全体がフラットな関係に

地域自主組織としての活動を通じて、次第に増えてゆく地域の課題をどのように解決するか。その一つの出口が、労働者協同組合という新しい組織と働き方です。

扱う事業が増えるごとに労務管理や会計処理、契約事項など、専門的な業務も増加し、そのための時間や担い手不足が課題でしたが、今回、労働者協同組合として地域自主組織の事業部門の法人化を図ることができたことで、未来への展望も見えてきました。

まだ課題はいくつもありますが、まず、これまでの任意団体の躍動鍋山と新しい労働者協同組合である労協うんなんとの連携を、より緊密にしたいと考えています。また、これからますます必要となる人材の確保をどのように進めていくかも重要な課題です。

これからはどんな課題も、躍動鍋山のメンバーと労協うんなんの組合員、そして労働者協同組合になったことによって全国に広がった仲間たちや、雲南市役所、地域住民の皆様と一緒に話し合いながら、自分たちらしい在り方を模索していくつもりです。

労働者協同組合の設立で、新たな地域の要望がみえてきた

労働者協同組合という法人を立ち上げたことで、地域の新たな課題や、これまでは聞こえてこなかった要望が届くようになりました。
これは、労協うんなんへの関心の高さと期待の表れに他なりません。労働者協同組合が誕生したことで、地域に埋もれていた新しい課題や要望がいっそう浮き彫りになりました。

今後は、これまで以上に地域の皆様の声に耳を傾け、新しい取組を検討していきたいと考えています。

今後の方向性

安心して暮らし続けられる鍋山地区をめざして

これまでの鍋山地区は多くの困りごとを住民自身が自分たちで話し合い、仕事として成り立たせてきました。その実績を通じて住民の生活が守られ、地域の人々が活躍する場が生まれ、ひいては住民同士の関係性が深まり安心して暮らせる地域づくりにつながってきました。

労協うんなんの設立は、これまでの成果を維持するだけでなく、事業部門の発展的な継続や新たな人材の確保と教育、さらには経営に関する複数年での検討など新しい挑戦の始まりとなります。

労協うんなんとして、新しい分野の挑戦へ

まだ検討中ですが、既存の事業に加え、家屋の改修や修繕事業、土木・建築の受託事業、古物及び中古物品の回収・売買事業など、新しい分野の事業にも挑戦していこうと考えています。

労働者協同組合を活用し、地域で多くの事業を創出することによって地域の内外からたくさんの事業の担い手が集い、その成果として様々な地域課題を解決する仕事が生まれることを目指しています。

誰もが安心してずっと住み続けられる鍋山地区、暮らしに根付いたサステナブルな暮らしを楽しむことができる鍋山地区と雲南市になってほしい。私たちはそう願っています。

基本情報

法人名  労働者協同組合うんなん
事業所の所在地  島根県雲南市三刀屋町乙加宮2446番地2
設立  2024年2月
事業内容  温泉施設の管理運営(指定管理)、地域の困りごとサポート事業など
組合員数  36名
組合員の年代別構成  40代~80代
組合員以外の就労者  0名
売上高  1,100万円(2024年度見込)
出資1口の金額  5千円
出資の総口数  83口

(令和6年5月末現在)