不登校・ひきこもり経験者が運営する映像・デザイン制作会社
東京都新宿区に、不登校・ひきこもりをした若者たちが立ち上げた株式会社があります。映像制作やパンフレットやチラシ等のデザイン制作が主な事業です。

自分たちに合った働き方を求めて
代表のIさんは、中学校で不登校を経験し、フリースクールを経て、同じような経験をした若者が集まる大学に入りました。そこで出会った仲間とともに映像制作の手法を学びながら、映像制作会社のインターンに参加したり、児童館の紹介映像や市民運動のイベント映像の制作などを請け負ったりすることで、働くことへの自信を得ていきました。
卒業後の進路を考えたとき、Iさんと仲間たちは「自分たちにあった働き方を求めて、既存の会社に入るより、起業した方が早いのではないか」と考えました。そこで、大学時代に繋がりを持った人たちに出資を募り、自分たちでもお金を出し合って株式会社を起業しました。

お互いにフォローし合って働く
現在、組織の運営は、毎週の全員参加の話し合いを経て行っています。ここでは、従業員も取締役も対等な立場で意見を述べ合って決定していきます。それぞれが、アルバイトなどで傷ついた経験があることから、仕事で無理をしそうなときはお互いにフォローし合ったり、また、働くことのみならずそれぞれの人生を大事にしようとしています。

口コミでの仕事が広がる
それぞれの給料、労働時間、経営の方針も、話し合いの対象です。また、利益を重視するのではなく、依頼主との関係を大事にするということも話し合っています。
設立初年度には、UNHCR(国連高等難民弁務官事務所)からの依頼で、ミャンマーのカレン族の難民に、第三国定住先として日本を紹介する映像を制作しました。視覚障がい者の団体からのパンフレット制作依頼も請け負いました。こうした仕事の内容や、関係を大事にする仕事の仕方を評価いただき、今では、口コミでマイノリティ団体やNPO、協同組合からの仕事が多くきます。
コロナ感染症拡大により映像制作業界も影響を受けるなか、皆で話し合って、映像やデザイン制作に加えて映像配信業務にも力を入れ始めました。


労働者協同組合の設立を検討
「私たちには失敗しても受け止めてくれる場がありました。そして、存分に試行錯誤して、一緒に変わっていける仲間がいました。そのことが当法人の設立へとつながりました」とIさんは語ります。労働者協同組合について知ったのは、仲間の一人がひきこもりの支援者が集まる全国大会に参加したのがきっかけでした。そこで紹介された労働者協同組合の取組みは、「自分たちの目指す働き方に近いな」と感じました。
自分たちに合った働き方を求めて、現在、労働者協同組合の設立を検討しています。
