「ここに来ると誰かにつながる」多世代の居場所づくり

いまの社会ではご近所とのつながりが希薄になり、格差・貧困も増大しています。
なにか困ったとき相談相手もいない人が多いため、神奈川県川崎市で人と人のつながりを強めて「お互いさまのたすけあい」を地域にひろげようと「多世代の居場所」を立ち上げました。

「お互いさまのたすけあい」の理念

2002年3月に設立し、デイサービス、ヘルパー派遣、ケアプラン作成、家事支援・子育て支援、川崎市産前・産後家庭支援ヘルパー派遣事業、居場所事業(ボランティアで運営)の6つの事業を現在行っています。
介護保険による支援がはじまる前から「参加型福祉」という概念をもって運営しており、専門職だけでの仕事ではなく、地域の人々が持ついろいろなスキルを活かして、高齢であっても子育て中であっても障害があっても、住み慣れた地域でその人らしく生きていくために、「お互いさまのたすけあい」という理念を基に事業と運動の両輪で進めています。

とても居心地のよい事業所のコツ

設立して20年が経過する中で介護保険事業の専門性を高める資格取得も重要になり、メンバーのスキルを積み上げてきました。2002年にメンバーになった人も現在10人在職中で総数は43人の事業所になりました。
協同労働での運営は1人1票を行使しながら、皆で話し合って決定していく面白さがあります。運営には「平等・公平」という基本があり、今日メンバーになった人も、長く所属している人もお互いの意見を出し合いメンバーシップを大事にしています。そのため、とても居心地の良い職場になり、その結果、離職率が非常に低い事業所になっています。

給料をいくらにするかはみんなで決めています

私たちの事業所では、給料のことを分配金という言い方をしています。誰かが給料の額を決めているわけではなく、予算に基づきみんなで自分たちの給料や事業運営のお金の使い方を決めています。
自分たちで事業を起こし働き方をつくり、収支も全員で考え実践していく協同労働の形態をつくってきました。働き方は多様ですが、基本的には利用者にあわせて働く曜日を決めています。旅行や趣味、介護や子育て等の都合、コロナなどの状況の時はお互いさまで勤務を交代しながらやり繰りしています。

多世代の居場所をつくる働き方

2019年4月、「多世代の居場所」を設立し、常設の居場所事業を始めました。基幹事業は現在黒字ですが、居場所の事業は赤字です。しかし、みんなで話し合いをしてそれまで貯めてきた資金を活用することにしました。地域にとって何が必要かを話し合ってきたことで生まれた事業だからです。
自分たちがいろいろ専門的な仕事をして収入として得る以外に、地域の豊かさのために使用するお金も剰余金として確保しています。常に安心して暮らせるまちづくりという視点を持って事業に生かし、事業所の運営の剰余金を何に使うかはみんなで決定します。組織として5ヵ年計画を策定しながら中長期の展望を持ち、持続可能な地域社会に向けてメンバーそれぞれのできることを持ち寄って発展してきたと思っています。
この事業所はメンバーの居場所にもなっています。80歳を過ぎた方や障害のある方も共に働いています。その人のできる仕事を一緒に考える働き方は、働く人たちのやりがいや生きがいになっています。
みんなで話し合い、みんなできめる協同労働という働き方を地域に広げ、「お互いさま」が息づく豊かで優しいまちづくりを目指して行きたいと思います。