労働者協同組合ワーカーズコープ・センター事業団
森のとうふ屋さんの手づくり菓子工房(令和5年4月設立)

「ともに働き、ともに生きる」地域づくりの実践

労働者協同組合ワーカーズコープ・センター事業団 埼玉西部福祉事業所が運営する「森の102工房・森のとうふ屋さんの手づくり菓子工房」は、埼玉県所沢市で障害の有無に関係なく誰もが安心して働き、暮らしていける地域づくりを目指して活動しています。豆腐や湯葉の製造、おからや豆乳を使ったお菓子の製造・販売を行っています。

これまでの活動の経緯

「継業×誰もが働ける場づくり」を目指して

2009年11月、埼玉県所沢市のある廃業した豆腐屋から、障害者と共に働き地域課題の解決に取り組んでいる現在の労働者協同組合ワーカーズコープ・センター事業団に「豆腐屋を復活させてほしい」という相談がありました。この豆腐屋では障害のある方も働いていたので、彼らの働く場を守ってほしいとのことでした。社会的にも「生活保護受給者の増加」「働きたくても働けない若者」や「派遣切り」がクローズアップされているときでした。その日から「町のとうふ屋さん」の再生と「誰もが働ける場づくり」への挑戦が始まりました。

  • 地元所沢の茶畑での作業風景

活動に当たり大事にしていること(意見反映の方法等)

障害の有無に関係なく誰もが「ともに働く仲間」

豆腐屋再生に集まってきた仲間は、生活保護を受給している人、派遣の仕事を転々としてきた人、これまで一度も働いたことがなかった若者、障害者手帳の交付対象ではないけれど何らかの障害がある人などでした。ここでは学歴や生活環境、障害の有無は関係なく、全員で自分たちの働き方、事業所の経営、今後の事業展開について話し合います。

ところが、街中の豆腐屋がだんだんと姿を消していく中で、豆腐屋の経営を行っていくことは容易ではありませんでした。とにかく、赤字を減らすこと、売上を上げることに奔走しました。そんな中、目先の売上を重視して経営を追求するあまり、ここで働き続けることが難しいと感じる仲間も出てきました。

  • 豆腐の移動販売

活動に当たり生じた困難や課題、それに対する対応

理念に立ち返って

ここで働けなくなる仲間が出てきては本末転倒です。そこでもう一度、私たちが大切にしている「誰もが働ける場づくり」「ともに働く」という理念について話し合い、障害福祉の制度も活用して、豆乳とおからを使ったお菓子屋さんを新たに立ち上げることにしました。障害の有無に関係なく誰もが自分らしく働くことができる場所、ここで働く人が自慢できる場所、そして、障害のある人もない人も一緒に働くことが当たり前の風景になれるよう、「(福祉)施設づくり」ではなく「店舗づくり」にこだわりました。

  • 森のとうふ屋さんの手づくり菓子工房LABOの店頭で

新たな挑戦 ~菓子工房2号店の立ち上げ~

2023年の4月、これまで1店舗だった菓子工房(現店舗名:LABO)の2号店(店舗名:conomi)を立ち上げました。1店舗目の運営を通じて、今働いている仲間のステップアップの場所、地域の拠り所となる場所を自分たちで構想して新店舗を作りたい、という想いがみんなの中に生まれてきたからです。

働く仲間や同じ団体の仲間、地域の方々とも何度も話し合いをして、みんながポジティブになれる店舗づくりを目指しました。商品のラベルデザインは、働く仲間の描いた絵がデザイナーさんの目に留まり、採用されています。店舗の内装作業も壁の漆喰を協力して塗ったりするなど、自分たちでやれることは自分たちでやりながら、無事オープンを迎えることができました。日当たりの良いイートインコーナーや、お子様連れの方でも気軽に来店できるなど、お客様からは好評のお声をいただいています。

  • 森のとうふ屋さんの手づくり菓子工房conomi店内の様子

今後の方向性

地域づくりの担い手を目指して

豆腐、菓子製造・販売から始まった事業所ですが、現在は農業や里山保全の活動にも取り組んでいます。日本農業遺産に認定された「武蔵野の落ち葉堆肥農法」にも取り組み、冬になると地元の高齢者や農業者と一緒に里山の落ち葉掃きに参加しています。また、定期的に狭山茶農家に出向き、土づくりや除草作業、化粧箱の箱折り等、地場産業のお手伝いも行っています。

労働者協同組合では、いままで働きづらかった当事者自身が出資することで、自らの働く場を作り出すことができます。そしてそこに、地域産業が重なることで、地域の中で役割ができ、地域づくりの担い手になる。労働者協同組合には、これからの人づくり、地域づくりの可能性を感じています。

  • 菓子製造にも使用する大豆を丁寧に脱穀

基本情報

法人名  労働者協同組合ワーカーズコープ・センター事業団
事業所名  埼玉西部地域福祉事業所 森の102工房・森のとうふ屋さんの手づくり菓子工房
事業所の所在地  埼玉県所沢市上新井1-5-12(本部は東京都豊島区)
設立  2012年7月に「森の102工房」を開所
(ワーカーズコープ・センター事業団は2023年4月1日労働者協同組合に組織変更)
事業内容  とうふ製造・販売/就労継続支援B型(菓子と惣菜製造・販売、農作業、書類電子化、手しごと)
組合員数   26人
組合員の年代別構成  20代〜70代
組合員以外の就労者  2人
売上高  8,170万円(2024年度見込額)
出資1口の金額  5万円
出資の総口数  209口

(令和6年10月末日現在)