「ともに働き、ともに生きる」地域づくりの実践

「継業×誰もが働ける場づくり」を目指して

埼玉県所沢市のある廃業した豆腐屋から障害者と共に働き地域課題の解決に取り組んでいる団体に「豆腐屋を復活させてほしい」という相談がありました。この豆腐屋では障害のある方も働いていたので、彼らの働く場を守ってほしいとのことでした。社会的にも「生活保護受給者の増加」「働きたくても働けない若者」いわゆる「派遣切り」がクローズアップされているときでしたので、町のとうふ屋さんの再生と誰もが働ける場づくりの挑戦が始まりました。

障害の有無に関係なく誰もが「ともに働く仲間」

豆腐屋再生に集まってきた仲間は、生活保護を受給している人、派遣の仕事を転々としてきた人、これまで一度も働いたことがなかった若者、障害者手帳の交付対象ではないけれど何らかの障害がある人などでした。ここでは学歴や生活環境、障害の有無は関係なく、全員で自分たちの働き方、事業所の経営、今後の事業展開について話し合います。しかし、街中の豆腐屋が段々と姿を消していく中で、豆腐屋の経営を行っていくことは容易ではありません。とにかく、赤字を減らすこと、売上を上げることに奔走しました。そんな中、目先の売上を重視して経営を追求するあまり、ここで働き続けることが難しいと感じる仲間も出てきました。

理念に立ち返って

ここで働けなくなる仲間が出てきては本末転倒です。そこでもう一度、私たちが大切にしている「誰もが働ける場づくり」「ともに働く」という理念について話し合い、障害福祉の制度も活用して、豆乳とおからを使ったお菓子屋さんを新たに立ち上げることにしました。障害の有無に関係なく誰もが自分らしく働くことができる場所、ここで働く人が自慢できる場所、そして、障害のある人もない人も一緒に働くことが当たり前の風景になれるよう、施設づくりではなく店舗づくりにこだわりました。

地域づくりの担い手を目指して

豆腐、菓子製造・販売から始まった事業所ですが、現在は農業や里山保全の活動にも取り組んでいます。日本農業遺産に認定された「武蔵野の落ち葉堆肥農法」にも取り組み、冬になると地元の高齢者や農業者と一緒に里山の落ち葉掃きに参加しています。また、定期的に狭山茶農家に出向き、土づくりや除草作業、化粧箱の箱折り等、地場産業のお手伝いも行っています。

今後、いままで働きづらかった当事者自身が出資することで、自らの働く場を作り出すことができます。そしてそこに、地域産業が重なることで、地域の中で役割ができ、地域づくりの担い手になる。労働者協同組合には、これからの人づくり、地域づくりの可能性を感じています。