労働者協同組合うつわ(令和5年3月設立)

利用者も私達も、みんなが幸せになる私達らしい介護を!

労働者協同組合うつわは大阪府大阪市で令和5年3月に法人設立の登記を行い、令和5年7月から訪問介護事業をスタートしました。
私達らしく、理想とする質の高いサービスを行い、利用者が住み慣れた地域で安心して生活できるようサポートを行っています。

これまでの活動の経緯

求めていた訪問介護を実現するために

「労働者協同組合うつわ」は、社会福祉法人が運営する訪問介護事業所の管理者1名、サービス提供責任者2名、そして登録のヘルパー1名、合わせて4名の志を同じくする仲間が集まって、立ち上げました。

以前の職場では、安定的な収入が約束される一方で、利益という数字も追わなければならず、上司や同僚との介護に対する考え方の違いや、職員採用時の上司との温度差に「何かが違う」と感じていました。また、自分たちが追い求める理想的な介護を行いたくても、組織の方針に従わなくてはならず、自分たちの求める介護のできる法人を立ち上げたいと思っていました。
しかしながら、自分たちで株式会社として起業するにはハードルが高く、いくら介護の知識があっても経営能力も立ち上げに関する知識もないため、漠然としたものでしかありませんでした。

そんなある時、同じ職場で働いていた同僚から「労働者協同組合法が去年の10月からスタートして、その組織形態がまさに中渡瀬さん達が求めている会社のあり方じゃないのか」と助言をもらい、すぐに労働者協同組合に関するセミナーを探し、大阪府に連絡をして、そのセミナーに参加しました。

セミナーへの参加を通じて、労働者協同組合は組合員全員で話しあい、合意形成を図りながら事業を行う組織だと知りました。この新しい法人格なら志を同じくする仲間と話しあいながら、自分たちが求める質の高いサービスや、細やかなところまでケアが行き届くサービスを提供することができるのではないかと感じ、早速、仲間にも共有し、法人の設立に賛同を得ることができました。

参加したセミナーを通して労働者協同組合を立ち上げるための個別のワークショップがあることを知りましたが、開催場所も遠く、また開催時間も遅かったため、子供を抱えているメンバーには参加は不可能だと感じていました。そのため、セミナー終了後に講師としてお話をしていた労働者協同組合ワーカーズコープ・センター事業団の方と大阪府の職員に相談したところ、とても親切に対応していただき、法人設立のための伴走支援をしていただけました。

そこからは、またたく間に法人格取得に向かい、大阪府主催のセミナーに行ってから約3か月後、「労働者協同組合うつわ」を設立、その2か月半後には、訪問介護事業所許認可書を取得して、はれて訪問介護事業を開始することができました。

  • 小さな事務所の玄関
  • サービスに向かう風景

活動に当たり大事にしていること(意見反映の方法等)

みんなで法人を盛り上げていく

訪問介護という仕事は、担当するヘルパーが1人で利用者のお宅に行き、日常生活のサポートをします。介護施設などは周りにスタッフがいて、何かあっても周りのスタッフが応援に来て助けてくれますが、訪問介護の場合にはそうはいきません。利用者の表情の変化や日常生活動作(ADL)の変化、その他小さな変化にも気を配り、一人で対応しなくてはいけません。

そのため、訪問時に気付いたことは必ず事務所に戻り、仲間と情報の共有を行います。利用者だけでなく、日頃からスタッフ同士コミュニケーションがとれるよう、登録ヘルパーも気兼ねなく来られる事務所の雰囲気づくりや環境づくりには特に気をつけています。
そうすることで、常勤・非常勤関係なく、報告・連絡・相談を行うことができ、利用者へのサービスについての提案だけでなく、運営に当たっての色々な提案もしやすくなると考えています。

  • 日々の情報共有の様子

株式会社などの法人では、株を多く持つ株主の意見や、経営者や管理職など一部の役職者の意見が採用されるなど、実際に現場で働く人の意見が採用されにくいことがありますが、一人ひとりが対等の立場で話し合いを大切にする「労働者協同組合」では現場の意見が反映された質の高いサービスの提供が可能だと感じています。一人ひとりが丁寧かつ小さな変化にも気づけるサービスを行うことで、ご家族やケアマネジャー、その利用者に関わる事業者、地域の方々に認めていただき、そこからまた新しい出会いやお仕事につながり、《みんなで法人を盛り上げていく》ことにつながっていくと思います。

活動に当たり生じた困難や課題、それに対する対応

もっともっと労働者協同組合を知ってもらう

設立準備を行っているときに苦労をしたことは、どこに行って手続きをしても「労働者協同組合ですか?」「株式会社の一つですか?」と言われたことです。
例えば、銀行口座をつくりに行った時も銀行の職員から「定款の一番後ろに大阪府が受け付けたという印鑑を押したものがあるので、それも付けて提出してください。」と言われましたが実際には必要なかったり、リース契約に通常以上に時間を要したりと、これまでにない法人格であるため、多くの方に知れ渡っていないという現状がありました。
対応いただいた銀行の職員をはじめ、立ち上げ時に訪れた法務局の職員でさえ、手続きが初めてのため、戸惑いがあったようです。
また、提出する資料が他の法人と異なったり、前例がないことを理由に断られたり、落ち込むことなどもありました。

これらの経験から、この新しい法人格について、「労働者協同組合うつわ」で行う訪問介護の事業を通して、利用者や保護者だけではなく、広く地域の方にも労働者協同組合を知っていただく必要があると感じました。

今後、地域の課題解決のために多くの労働者協同組合が立ち上がった時によりスムーズな手続きが行えるよう、「労働者協同組合」自体の知名度をあげていくことが必要であると感じています。「労働者協同組合うつわ」も、訪問介護事業所としての事業だけでなく、労働者協同組合法の周知にも積極的に取り組んでいきたいと思います。

今後の方向性

ケアの質を追求できる働き方に介護事業の未来を感じる

介護は正解のない事業です。だからこそ、みんなで考えて実践できるこの「労働者協同組合」と言う働き方が魅力的だと感じています。

一方的な意見ではなく、みんなの意見を取り入れ、ケアの実践に生かしていくというより良いケアの追及には、この考える時間や話し合う時間がとても必要不可欠な行程だと思います。

以前の職場では実践できなかったケアの質をみんなで追求できる働き方に、本来あるべき介護の姿、介護事業の未来を感じています。

「労働者協同組合うつわ」は、まだスタートして1か月も経っておらず、今は目の前のことをこなすことで手一杯の状況です。そんな中でも、「私もここで働きたい」と私たちの考え方に賛同してくれる仲間が新たに4人増えました。ありがたいことに、順調に新規利用者を紹介していただき、私たちが目指す、私達らしい介護を実践させてもらっています。
みんなでスキルアップをして、つながりも大事にしていく、他では出来ない介護事業を労働者協同組合うつわで実践して実績を積み上げていきたいと思っています。引き続き、利用者・ご家族、地域の方々、その他関係事業者に貢献できるよう、まずは訪問介護事業の安定を図るべく、日々精進していきたいと考えています。

  • 「うつわ」の仲間たち

基本情報

法人名  労働者協同組合うつわ
事業所の所在地  大阪市浪速区敷津西一丁目3番25号セジュール敷津101号
設立  2023年3月20日
事業内容  訪問介護
組合員数  7人
組合員の年代別構成  30代~60代
組合員以外の就労者  2人
売上高  400 万円(年間見込額)
出資1口の金額  5千円
出資の総口数  2 万5千円

(令和5年8月現在)