東白川村労働者協同組合(令和5年4月設立)
過疎地域の困りごとを少しでも解消したい!
「東白川村労働者協同組合」は、岐阜県加茂郡東白川村を中心としたエリアで、草刈り、茶畑の管理代行、生活支援・移動支援、家の片付け、空き家の管理などの事業を行う団体です。いままでは自分でできていたけど、高齢となりできなくなってしまった、そんな「地域の困りごと」を少しでも解消したいと設立されました。
2023年8月現在は、草刈りと茶畑の管理代行を軸に活動しています。
これまでの活動の経緯
減り続ける人口、助け合いでは維持できなくなりつつある生活
東白川村をはじめ、岐阜県内では地域の人口が急激に減少しています。
東白川村では、2023年時点で人口が2,000人を割り込んで1,922人(推計人口、2023年6月1日時点)となりました。人口密度は22.1人/㎞2であり、これは東京ディズニーランドの2倍の広さの土地に22人しか住んでいないことを意味します。
若者は高校を卒業すると仕事や進学のために村を離れて都会に出ていくため、18歳から35歳までの人口が極端に少なくなり、65歳以上の高齢者が人口比45%となりました。また、高齢者の自然死と若者の地域外への移住で、人口増減率はマイナス10.84%となっています。人口が減ると、途端に共助ができなくなり、生活しにくくなります。
そこで、田舎暮らしを支えるために、東白川村労働者協同組合(以下、通称「かもしか団」)を設立しました。私たちは、東白川村を中心に、農林水産業・商工業等の地域産業および地域の生活環境を、軽作業や IT、事務作業の補助を通じて支えることを目的に活動しています。要するに「地域の困りごと」を少しでも解消していきたいと思っています。
現時点での具体的な事業内容は、草刈り、茶畑の管理代行ですが、いずれは、生活支援・移動支援、家の片付け、空き家の管理などの事業を行う予定です。
- 地元名産の白川茶を提供する店舗”Gifuto”に併設された事務所の建物
きっかけは村役場主催のIT推進有識者会議
「かもしか団」は、ひょんなことから誕生しました。きっかけは、2022年度に東白川村役場が開催したIT推進有識者会議です。
IT推進有識者会議は「村内にIT関連の事業を吹き込もう!」というテーマで発足しました。メンバーは、東京からの移住者でITプログラマー、元地域おこし協力隊として同様に東京からの移住者で現在喫茶店を経営している方、地元会社で経理を担当している地元出身の方など、現在の「かもしか団」の中心メンバーが集まりました。
同会議には、空き物件(村内の空き家や未利用施設)と村外からのワーケーション利用をうまく結びつけるために、他地域のコワーキングスペースの視察を通じて事業内容を検討したり、村の高齢者を対象としてスマートフォンの使い方教室を実際に開いたりしました。
そのとき、コワーキングスペースの管理などを実施するための法人格として設立準備を進めていたのが「労働者協同組合」でした。
労働者協同組合という法人格を検討しようと思ったのは村役場の方から紹介いただいたことがきっかけです。出資金が少なく済むこと、また、事業の透明性が高い活動を行うことができることなどが理由でした。
ところが、当初コワーキングスペースとして使う予定だった施設を、他の事業で使うことが急遽決まり、利用できなくなってしまいました。会議が開かれ、コワーキングスペースを運営すること以外の代案が出ず、IT推進協議会は2023年2月に解散となりました。
しかし、せっかくここまで労働者協同組合の設立準備を進めてきたので、コワーキングスペースの管理は事業から外して、少し事業の方向性を変えて、村の中で必ず需要が見込める草刈りや茶畑の作業代行を事業の中心として法人を設立することにしました。
労働者協同組合の法人登記に必要な書類づくりなどの開業までに必要な準備は、すべて理事3名で行ったので大変でしたが、2023年4月21日に設立登記の申請が完了し、岐阜県で最初の労働者協同組合を設立することができました。
活動に当たり大事にしていること(意見反映の方法等)
地域に必要な「小さい仕事」を集めて人々の暮しを支える
私たちが今からやろうとしている仕事は、草刈り、茶畑の管理の代行、生活支援といった「小さい仕事」です。こうした仕事は、大きい事業や利益の出る事業にはならないため、村外からどこかの民間企業が参入することも考えにくく、地域で高齢化と人口減少が進む中、このままでは誰もやらないまま「できなくなっていく」だけの仕事です。しかし、村にとって、また、村に住む人たちにとっては、本当に必要な仕事だと思います。
例えば、草刈りは景観維持だけではなく、人が住む場所にタヌキやキツネやシカ等の野生動物が草に隠れて出没することがないようにするための、人が暮らすための知恵です。農業をしている人たちにとっても大事な活動です。
また、今後本格化させようと考えているのが、車で村からどこか買い出しに出たり、病院に行くような移動支援です。村では交通空白地として福祉運送をやっていますが、要介護1以上の方は無料で移動支援があるものの、元気な高齢者向けのサービスがありません。そこで、元気な高齢者を念頭において、公共交通空白地有償運送というスキームで、今計画しています。
草刈りや買い出しなど、日常の少しのことができなくなってくると、次第に暮らしが成り立たなくなっていく可能性があります。私たちの活動で人々の暮らしを支えていくことができたらいいなと思っています。
そして、村の皆さまからお金をいただく代わりに、しっかりと継続した事業にすることでみなさんにお返しできたらと思います。そのため、制度上、労働者協同組合では組合員が組合の事業に従事した程度に応じて配当を行うことができますが、私たちはそうした配当を行いません。その分、長く継続的に活動できるように考えていきたいと思います。
高校生・大学生も気軽に短期で働ける場所づくりを目指して
東白川村には高校生や大学生が気軽に短期間働ける場所がありません。
若者が行けるところ、例えば、都会にあるファミレスやファストフード店のようなところもなく、子どもたちの行き場がありません。
東白川村にいても、家か川しか遊ぶところがなく、ちょっとした小遣い稼ぎもできないのでは、若者も夏休みなど貴重な長期休暇で里帰りしようと思わないでしょう。
そこで、「『かもしか団』に参加すればいつでも草刈りや片付けなどの仕事ができる」ことを目指しています。
まずは、夏と冬休みの短期アルバイトを1名募集できるようにしたいと思い、いろいろと計画中です!そして、現役高校生や大学生を組合員として増やし、将来にわたって地域と様々な形で関わる人を少しでも増やしていけたらいいと考えています。
活動に当たり生じた困難や課題、それに対する対応
思ったよりもすぐに始められない事業、しかし感じる法令遵守の大事さ
草刈りや車での移動支援の事業は、思っていたよりもすぐに始められない、準備が必要な事業でした。
まず、草刈りについては、「刈払機取扱作業者安全衛生教育」という有料の講習の受講が必要で、丸1日要するこの講習に合格することで、修了証がもらえます。
また、車での移動支援にも、バスやタクシーなどの公共交通機関との調整が必要でした。私たちの場合は、公共交通空白地有償運送という制度を利用して事業実施を準備中であり、輸送安全講習の受講や運行管理責任者の設置などが必要となります。
こうした草刈りと車での移動支援は、ボランティアでやる分には非常に喜ばれ、かつ、すぐに始められることですが、有償で事業として実施する場合には、こんなにも必要な手続きや段取りが必要なのかと感じました。その上、高齢者福祉のこととなると福祉関連の法律や規則も知る必要があります。
「過疎地域でやる人がいないから私たちがやろうとしているのに・・・」と思うこともありますが、正しく運用しなければ事業継続は難しいため、きちんと法令を遵守していきたいと考えています。
村のサポート(補助金制度)も活用
東白川村には「東白川村がんばる地域づくり補助金」という補助金があります。元気な村づくり、地域づくりを進める団体の今までにない新しい事業に対して交付される補助金(上限20万円)です。 提案された事業は、書類審査やプレゼンテーション審査で交付が決定されます。
2023年4月に設立した「かもしか団」は、すぐに村役場にこの補助金の申請を行い、プレゼンテーションの結果、その交付が決まりました。補助金を草刈りと移動支援の講習費、チラシなどの広告費に活用したいと思います。
今後の方向性
過疎地域で生きていく人たちを支えられる団体になる
「かもしか団」では、全員が集まって毎月1回打ち合わせを実施する予定です。先日はじめて理事以外の組合員も参加しての打ち合わせを行いました。まだ設立して間もないため、わからないことや、どう進めたら良いのか考えがまとまっていないことが沢山あります。それらを丁寧に記録していき、活動に落とし込んで、きちんと体制を整えていきたいと思います。
そして、この過疎地域で生きていく人たちを支えられる団体となれるよう、「かもしか団」を育てていきたいと思います。
私たちの活動を通じて、東白川村が、移住しやすい、仕事のしやすい場所だと多くの人に知ってもらい、東白川村やその周辺の地域である、佐見・黒川・白川町・加子母などで暮らす人たちがもっと増えることを願っています。
「かもしか団」では、一緒に事業に関わってくれる方を大募集中です。私たちと一緒に東白川村に住む人たちを支えていきませんか?ご連絡お待ちしています。
- 理事の野村さん(左)と代表理事の福田さん(右)
基本情報
法人名 東白川村労働者協同組合
事業所の所在地 岐阜県加茂郡東白川村五加1546
設立 2023年4月21日
事業内容 草刈り、茶畑の管理、生活支援・見守り、ゴミ捨て・片付け、オークション代行、空き家の点検・管理
組合員数 7人
組合員の年代別構成 20代~70代
組合員以外の就労者 0人
売上高 300万円(年間見込額)
出資1口の金額 1000円
出資の総口数 7口(7000円)
(令和5年8月1日現在)