労働者協同組合ワーカーズコープながの(令和5年4月設立)

幸せの国、信州から「協同労働」で「よい仕事」を!

「労働者協同組合ワーカーズコープながの」は、長野県でビル管理や清掃、医療・福祉のサポート業務、弁当配食やレストランの運営、売店、介護サポートなどの事業を行っています。高齢者、障害者、失業者の仕事おこしを進め、人と地域に役立つ「よい仕事」を通じた地域づくりに貢献するために活動しています。 

これまでの活動の経緯

「よい仕事」を目指し、ゼロからの仕事おこし

労働者協同組合ワーカーズコープながのは、1980年8月、当時の長野中高年雇用福祉事業団を母体に設立されました。この事業団は、雇用を創出し、失業者・不安定労働者・障害者などの雇用と生活を守り、公益の活動を行う団体です。そこで目指したのは、心豊かに働き、人と地域に役立つ、働きがいを感じる、地域に活力を生み出す「よい仕事」です。「よい仕事」を目指し、ゼロからの仕事おこしが始まりました。

私たちの「よい仕事」は、長野高校のトイレ清掃から始まりました。長野中央病院の清掃業務委託、売店、レストラン、駐車場管理業務と事業が拡大し、長野県内の民医連の病院や介護施設の清掃業務、売店、送迎業務を受託できるようになりました。
2000年代に入り、新しい福祉社会の創造を目指して、地域福祉事業所の開設を進めてきました。介護保険事業(居宅介護支援、訪問介護、デイサービス、介護タクシーなど)、配食サービスなど高齢者ケアの仕事おこしを進めました。
障害者総合支援法関連事業(障害者グループホーム、障害者就労継続支援B型、地域活動支援センター)にも取り組み、2008年からは厚生労働省からの委託事業「ながの若者サポートステーション」の運営が始まりました。

2005年からは指定管理事業にも取り組み、千曲市健康プラザ、長野市豊野西部・東部児童センター、松本市新村・和田児童センターの運営が始まりました。2015年からは生活困窮者自立支援法に基づき、就労準備支援事業を受託し、県内3か所で就労準備支援を行っています。同年からは全県で社会連帯活動が盛んになり、「子ども食堂」の取組が拡がりました。 

こうして事業を拡大する中、2004年には「企業組合労協ながの」と名称を変え、労働者協同組合へ組織変更をするという方向性を明確に打ち出していきました。設立から43年目を迎え、2023年4月からは「企業組合労協ながの」から労働者協同組合法人に組織変更し、「労働者協同組合ワーカーズコープながの」と名称を変え、現在に至っております。

  • 法人移行記念フォーラムの様子

活動に当たり大事にしていること(意見反映の方法等)

とにかく議論、膝を付け合わせ話し合うこと

私たちは設立当初から、働くことを希望する人たちが出資し合って共に働き運営する「協同労働」という働き方を続けています。この働き方は、労働者協同組合の基本理念とも一致するものです。この働き方を実現するためには、合意と納得をするにあたり、仲間達ととことん話し合う場を設けることが大切です。
協同労働は手間暇かかるものです。現場の仲間達は小さなことでも話し合い、備品の購入や修繕も仲間達との合意で進めています。その中で情報共有についても意識しております。皆で同じ目標に向かって進み、活動していく上では情報共有をし、意識を統一します。
病院清掃業務などの提携先とも定期的に協議の場を設けており、今以上によい仕事を進めていくうえで話し合いの場は大切です。

幸せな職場の実現に向けて「よい仕事」を追求する

また、私たちは、幸せな職場の実現に向けて「よい仕事」の追求を大切にしています。近江商人の教えに近く、「三方良し」(買い手良し×売り手良し×世間良し)を常に心がけています。そのために、チームの生産性向上を目指すことが結果として、人材定着と経営改善に繋がるよう努力しています。
ムリ・ムダ・ムラを無くすために、リーダーはルーティン業務から抜けて、未来を創る仕事と、今ある現場のマネジメント、人材育成に努めています。リーダーと組合員のワークライフバランスを実現するために、残業を減らし、ペーパーレス化を推進し、2度手間をなくすなどの事務効率化も進めています。その結果として、労働条件の改善(最低賃金からの脱却、給与条件向上)が実現できるよう挑戦しています。
そのためには、やはり、人材定着化による「よい仕事」の継承が大切です。人材定着に向けて、個別面談も推奨しています。上長が話を傾聴して、否定しないで、信頼関係を構築しながら、「よい仕事」や協同労働の働き方を伝え、本人の強みを活かした成長を促していきます。その他、ブレインストーミング(アイデアを出すのが目的。否定せずにお互いのアイデアを尊重する)を活用し、全員でアイデアを出して業務改善等を進めていく手法も取り入れています。
協同労働という働き方を通じて、自分たちで「働きやすさ」を創り出し、ワクワク楽しみながら地域に役立つ「よい仕事」を推進していきます。

  • 会議の様子(合意形成・意見反映の様子)

活動に当たり生じた困難や課題、それに対する対応

想いを持った人たちが活躍できる持続可能な組織へ

持続可能性のある組織にするためには、まずは脱最低賃金が目標です。業務効率化を図り、しっかりと利益を出して、その利益を原資として、最低賃金からの脱却を目指します。働く人のモチベーションを上げ、労働人口の減少に向けて採用の促進を図り、持続可能な組織にしたいと思います。
そのためには、「全組合員経営」の意識変革が必要です。経営を他人事にせず自分事として、現場で経営状況を把握し、課題の見える化を行います。具体的な課題解決に向けた戦略・戦術の構築ができるように法人としても支援を進め、毎月の理事会、事業所会議、各現場での会議を通じて情報を共有し、現場の組合員の意見を反映するよう努めています。
同時に、ワークライフバランスを大切にし、時間外労働がなく、仕事と家庭の両立を図れるようにしていきたいと考えています。働く人たちが安心して、やりがいや生きがいを感じて働ける職場環境を協同労働の働き方をとおして作っていきます。 お互いを思いやり、気遣い、助け合い、そして、お互いに感謝する。「ありがとう」を沢山言うと、職場の雰囲気が良くなります。若い人たちが夢や希望を持って働ける職場づくりに向けて、子育て家庭の夫婦が働きやすい職場づくりや、所帯を持って働き続けられる給与形態の構築(世間相場並の所得)なども改善すべき課題です。

また、超高齢社会を迎え、労働人口が減少する中、元気で働ける高齢者の力が、今こそ求められる時代となりました。すでに組合員の半数以上は高齢者であり、まさに高齢者の方の頑張りで成り立っていますが、高齢になっても働きやすい職場環境の整備や勤務時間の調整など、高齢者が活躍できる組織体制の構築にさらに取組みます。

  • 食の事業で働く組合員

そして、想いを持った人たちが活躍できる持続可能な組織とするためにも、次世代リーダー育成研修の定期開催を行い、本物の想いを持ったリーダーの話を聞き、次なるリーダーの育成を図っていきます。同時に専門性を持った人材を迎え入れられる給与条件並びに幹部のレベルアップも目指します。

この間、様々なリスクが散在し、手を付けられずに、経営と運営に大きな損害を被った時期があったことの反省から、リスク管理委員会を設置し、全組合員でリスクを見える化し、緊急度、重要度が高い順、または解決できる課題から早急に解決するよう取り組んでいきます。

今後の方向性

「ワーカーズコープながの」と地域の未来を創っていきます

まずは、子どもや若者が安心して生きていける社会へ向けて、子どもの居場所づくり、子育て家庭へのアウトリーチ、産前産後サポート等、社会的養護分野の地域化へ向けて、SNS子ども相談&アウトリーチ、子ども家庭センターとの連携、さらに若者支援の事業拡大にも取り組んでいきたいと考えています。

  • 病院清掃の様子

また、長野県小谷村では村民同士の助け合いの「協同労働プラットフォーム」の仕事起こしが、役場×社協×ワーカーズコープの形で、持続可能な村づくりに向けて進んでいます。長野県全域のモデルとなれるよう取り組んでいます。
 
そして、「ワーカーズコープながの」事業の最大部門であるビルメン事業の拡大を目指します。私たちの強みは何か。強みの構築及び社会から選ばれるビルメンとは何なのかを追求していき、病院や介護施設などへの営業も進めています。
また、全国的にも必要とされている住まい支援(全世代)も検討しています。障害者グループホーム(共同生活援助)、木曽町障害者ケアホーム風舎の今後の展開及び長野市にて障害者が安心して暮らせる「住まい」確保へ向けて、法人内に検討のためのプロジェクトチームを設置します。
若者サポートステーションとも連携している自立援助ホーム(児童養護施設卒業生及び高校生などの若者の住まいと暮らしの支援)の担い手が足りていないので、全国の事例を学びながら検討しています。
さらに、障害者の居場所、就労支援、重層的支援体制整備事業(市町村)既存制度事業枠組みの拡張に対して、子どもから高齢者まで安心できる居場所・相談機能・アウトリーチも視野に入れています。
重層的な職業訓練及び公的訓練就労事業制度(仮称)に向けた講座事業(全世代向けの支援に向けたケアワーカー養成)や自治体の公共事業(指定管理や委託)を通して地域づくりへの可能性を伝え、労働者協同組合を活用したい長野県民向けにワーカーズコープの創業や運営の支援を行っていきたいと考えています。

基本情報

法人名  労働者協同組合ワーカーズコープながの
事業所の所在地  長野県長野市南長野新田町1482-2
設立  1980年8月
(2004年企業組合法人格を取得、2023年4月労働者協同組合に組織変更)
事業内容  ビルメンテナンス、売店、食関連、介護保険、障害者総合支援法、生活困窮者自立支援事業、若者サポステ、児童センター、就労準備支援
組合員数  340人
組合員の年代別構成  20代~70代
組合員以外の就労者  80名
売上高  8億2千万(2022年度実績)
出資1口の金額  5千円
出資の総口数  19600口

(令和5年5月末現在)