労働者協同組合33(さんさん)(令和5年3月設立)
奥出雲の地域課題を解決する、自立した持続可能な組織づくりへ
島根県奥出雲町で、地域の有志のメンバーで労働者協同組合を設立し、共働き家庭の子どもたちへのお弁当配達や高齢者の移送サービスなどを提供。自立した持続可能な組織を目指し、仲間が気兼ねなく言い合える関係を育み、一人ひとりの成長と面白い事業を生み出す取組を行っています。
これまでの活動の経緯
奥出雲の困りごとを解決したい
島根県奥出雲町に住む地域の有志の方々が、奥出雲の困りごとの解決を図ろうと「労働者協同組合33(さんさん)」を設立しました。奥出雲町は1.6万人の人口で、高齢化率も43%と高まっています。子どもたちや高齢者の孤立の問題は、大きな地域課題です。
労働者協同組合の設立に集まったのは、こうした課題に対応しようと任意団体で取り組んできた、様々なバックグラウンドを持つ8名の方々。地元奥出雲町に戻って昨年度末(2023年3月末)まで地域おこし協力隊で活動してきた方、Iターンをして不動産業を営む方、社会福祉協議会のOBの方、町議会議員、地域食堂で食事を作っていた方、奥出雲町に移住してきたITに強い方などの8名が出資し、組合員になりました。
活動の始まりは子どものお弁当づくり
労働者協同組合の前身は、任意団体「さんさん会」です。きっかけは、昨年2022年1月に、地域食堂「ともに食堂」の管理栄養士をしていた現法人メンバーの一人に対して、共働きの家庭から「夏休み中に子どもにお弁当を作り置きしても食べずに傷んでしまったり、子どもにお金を渡してもお菓子ばっかり買ってしまう」という悩みの相談があったことです。他の家庭にも聞いてみると、夏休みの子どもたちの昼食に困っている問題が分かりました。
それなら有志のメンバーで何とかしようと、任意団体「さんさん会」が立ちあげられ、当時既に開催されていた地域食堂の運営者にも相談して、子どもたちに地元名産の仁多米(にたまい)を使ったお弁当を週に1回配り始めました。
こうした取組は共働きの家庭にも非常に好評となり、「週に2回お弁当を配達して欲しい」、「夏休みだけでなく、冬休みも春休みもお願いしたい」という声があがり、今では、週に3回、小中学生向けに60食を配達するほどになりました。
高齢者の移送サービスを始める
また、高齢化が進む町の中で、地域の方から「地域に住む高齢者を月1回のサロンに連れて行ってほしい」という声があり、高齢者の移送サービスも始めました。島根県の「小さな拠点づくり事業」を活用し、アプリを使った有償運送の取組を行っている京都府京丹後市への視察、ワーカーズコープ・センター事業団が開催する勉強会(2回)への参加をしました。公共交通空白地有償運送のためのドライバー講習も受講し、2年間の実証実験を行い、高齢者の送迎を行いました。
労働者協同組合という法人格を選択
こうした活動を続ける中、これらの活動を継続し、さらに広げていくためには、「有志のボランティアでは継続的に続けていくことは難しい」、「個人ベースで何かあったときの責任を追い切れない」などの声がメンバーからあがり、また、頼む側からも「お金を払ってでも「さんさん会」にお願いしたい」という声があがりました。
これらの活動の事業化・法人化を検討していたときに、労働者協同組合という新しい法人制度ができたことを知りました。昨年2022年11月に島根県庁主催の労働者協同組合法の学習会に参加し、その後も、ワーカーズコープ・センター事業団山陰開発本部の支援を受けながら、令和5年3月に労働者協同組合33(さんさん)を設立しました。
設立に当たっては、農事組合法人やNPO法人、一般社団法人なども検討しましたが、様々な業種の事業ができることや、簡便に設立できること、設立時にお金も掛からないことを考慮して、最終的に労働者協同組合の法人格を選択しました。
活動に当たり大事にしていること(意見反映の方法等)
得意分野を掛け合わせば、可能性は無限大
上述したように、設立は様々なバックグラウンドを持つ、8人の仲間で立ち上げました。それぞれの得意分野を生かし、みんなで話し合い、面白いことをやろうと取り組んでいます。例えば、子どもへのお弁当配食事業では、30代~40代の親御さんが利用されており、二次元バーコードを使った注文フォームは大変好評いただいています。利用者の方からは、無料だと頼みにくいとの声もあり、キャッシュレス決済の仕組みを注文フォームの中に入れる予定です。メンバーの得意分野を生かしつつ、色々な意見を取り入れられるよう、定期的に会合をしています。
居酒屋で飲みながら食べながら、楽しく本音で話し合い、様々なアイディアが生まれます。現状の事業内容にとどまらず、「電気自動車で移送サービスができないか」など、各自の得意分野を掛け合わせた妄想がはじまっています。
- 「子ども弁当」手作りの様子
今後の方向性
地域存続の突破口は自ら行動をおこすこと
子どもたちの孤立や、高齢者の孤立などの地域課題について、誰かがやってくれるのを待つのではなく、自分たちの将来の問題と考え、自ら行動を起こすことが大事だと思います。その実践を、まずは自分たちでできることから始めたいと考えています。
その際、当法人では安定的な活動が可能な拠点を持っておらず、お弁当を自分たちで作れる厨房や、地域の方々が集い、多様な活動が生まれる場所を探しています。町がこうした条件にかなう遊休施設を保有していることから、今後、こうした施設の指定管理者公募への応募を検討しています。
労働者協同組合で、地域活動に新たな視点を!
今後、これまで、地域の農事組合法人が10年以上に渡り取り組んできた、田んぼでの子どもたちの遊び活動や、稲作の体験活動などを通じた関係人口づくりとの連携など、地域の活動を労働者協同組合と結びつけて、これまでの活動を維持・発展させていくような、新たな取組に挑戦していきたいです。
同じ意識で活動できる仲間づくりを心がけていき、様々な視点で地域を見ることが出来るようにして、10年、20年先には後継者が生まれて活動を継続していけるようにしていきたいです。
- 創立総会での集合写真
基本情報
法人名 労働者協同組合33(さんさん)
事業所の所在地 島根県仁多郡奥出雲町三所346-5
設立 2023年3月
事業内容 こどもの弁当配達、高齢者のサロンへの送迎など
組合員数 8名
組合員の年代別構成 40代〜70代
組合員以外の就労者 なし
売上高 約100万円(年間見込額)
出資1口の金額 1万円 出資の総口数 8口
(令和5年5月末現在)