生まれ育った我が町に、昔のようなにぎわいを取り戻したい
兵庫県尼崎市の南の端、阪神工業地帯の少し北にある阪神尼崎駅近くの商店街に、様々な事業を行う団体があります。設立は2014年。同じ職場で働いていた7人のメンバーで立ち上げました。設立当初の事業は造園と介護でした。

私自身この地域で育ち、現在もここで暮らしています。活動していく中で、商店街にもう一度昔のようなにぎわいを取り戻したいと思うようになりました。実際始めてみると営業をして仕事をもらって現場に出ての繰り返しで、はじめの1〜2年は仕事をこなしてが精一杯で地域に目を向けることはほとんどできませんでした。

2015年から無農薬の米づくりを始めました。そして、2016年8月、地域の食堂が始まりました。高齢者や子育て中のお母さんなど、誰でも来られる地域の居場所として、月1回行っています。2017年4月、空き店舗を改装し障がいのある子のための児童デイサービスがスタートしました。そして、同年7月、コミュニティスペースがスタートしました。コミュニティスペースには、レンタルスペース、フリースペース・講座など、地域の人たちがやりたいことを持ち込むことができます。
商店の人達と関係ができていく中で商店街活性化の取り組みに巻き込まれていきました。私たちや商店の方だけでなく近隣の学校の先生や生徒、大学生、市役所の職員、NPO職員など多様な人が一人の市民として参加し、毎月会議をし、商店街を盛り上げたい、もう一度賑わっていた頃を取り戻したい、そんな想いがある人が集まっています。これまでに、阿波踊りやアート展、頭にピンポン玉を乗せて自転車を押して歩く「押しチャリンピック」なんてこともしてきました。とにかく初めは楽しんで、面白がって、理屈はあとからくっつけてという感じでやっています。
その中で「刀トング」という面白い活動も生まれました。刀に見立てた掃除用のゴミばさみ刀トングを、学校や行政、地域のイベントなど、様々な場所でワークショップを展開してみんなで作成しました。そして刀トングで掃除をする人たちを「護美奉行(ごみぶぎょう)」と呼び、まちをきれいにするために清掃活動をしました。これまで900人もの護美奉行が誕生しているとのことです。

運営は苦労の連続です。現在は、4つの事業所で異なる事業を展開しています。働くメンバーも、7人から34人に増えました。最初の頃は、給料も少なく生活も大変でした。思い返すとしんどかったけど、人数も少なく意思疎通はとりやすく話し合いもシンプルでした。今は、創業当初の人数が少ない時に比べ、話し合うことや意思決定に工夫が必要になってきました。 その際、労協法でも定められている「意見反映」が特に重要になります。法律の成立と施行のタイミングで、もう一度みんなでこれからの方向性や組織の価値観を共有することが大切だと思いクレド作りをはじめました。「クレド」とは、組織のメンバー全員でチームのミッションやビジョン、行動指針を決める取り組みです。この取組を通じてメンバー一人ひとりが何のために、どんな風に働きたいのかを納得感を持ってこの先も進んでいくために、対話を重ねていく予定です。

早速、ワークショップをしたのですが、色んな意見が出てみんなそれぞれ感じ方・目指したい方向が違って面白かったのですが、同時にこんな調子で行動指針までたどり着けるのだろうか… パンドラの箱を開けてしまったようで恐くなり身が引き締まりました。
正解がなんなのかわからない、きっとゴールもなくずーっと探求し続ける、新しいような古いようなこの働き方に、本来労働が持つ価値が詰まっているはずなので、みんなで探していきたいと思います。