労働者協同組合ワーカーズコープ山口(令和5年4月設立)

維持可能で活力ある地域づくりにチャレンジ

労働者協同組合ワーカーズコープ山口は、地域で多様な人たちが共に働く場を創出するために、山口県の光市、下松市を中心に活動しています。土木事業を中心に、公共施設の管理や清掃、放課後等デイサービスなど、地域に必要な事業を行いながら、環境、食糧問題をテーマとした農業活動(米作り)や地域活動にも取り組んでいます。

これまでの活動の経緯

ゼロから始まったまちづくりへの挑戦

  • 設立当時の草刈り、植栽作業の様子

労働者協同組合ワーカーズコープ山口の始まりは、1980 年5月に山口県光市に設立された「光中高年事業団」です。同年10月に県知事登録後、11月から「企業組合光中高年事業団」としてスタート、海水浴場の貸しボートの監視から歴史が始まりました。

弱い立場の人や、日常生活の中で困難を抱えている方々に対して、「ともに」という相互扶助の関係をつくることを大切にして、困難を抱えた自らの経験が他者に対する想いを強くすると考えて活動に取り組んできました。

1982 年に山口県認可の職業訓練校「周南技術開発センター」(※)を他2社と合同で開校し、組合員自らが学び、水道・下水道工事に従事し、市計画に貢献しました。また、1985 年には「周南資源リサイクルセンター」を設立し、ガラス瓶を年間3,000トン回収し、選別して粉砕するなど、環境保護と資源の有効活用によって最終処分場の延命に協力しました。1989年には、虹ケ浜海岸松林を風や飛砂などの害から住宅や道路、人々の生活を守る飛砂防備保安林として、また市民の憩いの場として、保全・育成する必要性を光市に提案し、虹ヶ浜松林保育事業(2ha)を開始しました。この松林保育事業は現在も一部継続しています。

※「周南技術開発センター」とは、1985年に開始した流域下水道計画に合わせた技能訓練を目的とする職業訓練校

新事業への挑戦

本格的な清掃業に挑戦するために、ビルクリーニング技能士の資格を取得して県に登録しました。1993 年から3000㎡を超える2施設の清掃業務を受注し、清掃業者として8施設の清掃を受託しています。

福祉関係の事業も開始しました。1999 年に山口県知事の認可を受け、ヘルパー養成講座を開校し、248名を修了させることができました。2006 年から身体障害者体育施設(サン・アビリティーズ光)、2009年からは福祉の増進を図る施設「憩の家」(60歳以上の高齢者に憩いの場を提供)2ヶ所、計3ヶ所の指定管理者となり、運営管理しています。

2012年に「企業組合ワーカーズコープ山口」に名称を変更し、長年活動してきた光市から、活動範囲を広げることを決断しました。組合員の身内に障害のあるお子さんがいたことで、当事者の居場所と親御さんのレスパイトケア(※)等を考え、放課後等デイサービス「児童デイサービスすだっち」を2018年に開設。1年で利用者が定員いっぱいになり、2ヶ所目の拠点「すだっちイースト」を開所し、障害のある小学生・中学生・高校生を対象に放課後に多様な体験を通して療育につなげるデイサービスを提供しています。

※レスパイトケアとは、介護にあたるご家族が一時的に介護から解放され休息をとることができるよう、代理の機関や公的サービスなどが一時的に介護等をおこなうこと

  • 仲間の「困った」に応えて立ち上げた「児童デイサービスすだっち」

耕作放棄された休耕田を活用した田んぼの取組への挑戦

2009年から耕作放棄された休耕田を活用した「みんなで作ってみんなで食べる田んぼ」の
取組をスタートしました。
この取組は、労働者協同組合ワーカーズコープ山口が加盟している「日本労働者協同組合連合会」が推進する「社会連帯活動」(※)として実施していますが、組合員の交流から始まり、その後、近隣の保育園や、放課後等デイサービス「すだっち」の子どもたちも田植えや稲刈りに参加する食育へと広がっています。
できたお米は組合員に配り、最近では一人60㎏以上のお米を渡しています。
さらに、シイタケの栽培も始め、玉ねぎやジャガイモの栽培も検討しています。

子どもたちとの食育を広げると同時に、組合員が食料に困らずに働ける職場づくりを目指しています。

※「社会連帯活動」とは、多様な市民活動を積極的に支援し、人々の連帯の輪を広げ労働者協同組合のまわりに地域の再生につながる活動を創り出すことを目的に、全国で地域課題に取り組む活動

  • 組合員が集まって米作り
  • 組合員一人一俵を達成!

活動に当たり大事にしていること(意見反映の方法等)

地域と共に地域課題に応える

労働者協同組合ワーカーズコープ山口では、土木、清掃、指定管理、生活支援の事業に約50名の組合員が就労しています。独居高齢者等の生活支援、公共施設の清掃、指定管理での福祉施設の管理運営など、農業と行政委託、自主事業の違いはありますが、地域に必要とされる仕事をこの44年間で段階的に起こしてきた実績があります。

複数の業種に取り組む特徴を生かし、「地域の課題に応える総合福祉拠点をみんなで目指そう」と理事会や全体集会、地域懇談会などで議論を重ねながら、仕事に取り組んできました。

今では、行政や民間業者、地域の人たちからも、地域に根差したまちづくりに貢献する団体として一定の評価や期待を頂くようになっています。

仲間同士の関係性

私たちは、仲間の力を最大限に生かす、よい仲間づくり「共に」を大切に事業活動として行っています。相手を思いやること、ありのままを認め合うこと、自由にものが言えること、何でも話し合える関係を築くこと、自分たちで決めて作り出せること、そこからみんなの知恵も力も湧いてくることが重要だと考えています。

放課後等デイサービス「すだっち」では、他の福祉施設で働いていた仲間が、自分たちで話し合って利用者本位のケアをしたいと集まり、これまで労働者協同組合ワーカーズコープ山口で大事にしてきた仲間づくりを基本に、話し合いで運営をおこなってきました。各現場単位だけではなく、2つの現場が集まった話し合いも毎月行い、多様な視点で子どもを捉えるようにしています。また、元家庭科の先生が食事づくりのプログラムを提供するなど、職員の多様な特技や想いを活かしたさまざまな体験活動をプログラムに取り入れ、子どもや保護者から好評となっています。

事業が発展し、現場が増え全体での話し合いが難しくなったときには、全体で「米づくり」などを行い、農業の楽しさを仲間と実感し、また、イベント等を多数開催することで仲間同士の関係性をより良いものへと進めています。

活動に当たり生じた困難や課題、それに対する対応

地域課題と経営基盤

新しい事業を立ち上げるためには、安定した経営基盤が必要となります。
6年前までは公共事業(土木、清掃、指定管理等)が事業全体の90%を占めていましたが、公共事業が占める割合が多いと入札などで仕事を失ったときに安定的な経営が脅かされる可能性があります。そこで、仲間や地域を主体とする福祉事業を展開することとし、現在は公共事業の割合を60%まで下げることができました。

また、これまで取り組んできた米作りと福祉事業を組み合わせるなど、付加価値を生み出すことで、事業や経営の安定を図り、地域のニーズに応え、存在価値が生まれています。

今後の方向性

社会的課題解決に向け一致団結

一人ひとりの組合員がどのように「労働者協同組合法」とその働き方(出資・意見反映・従事)を語り、拡げ、実践するのかということが課題となっています。私たちは課題解決に向けて「労働者協同組合」とういう新しい可能性と働き方を前向きに捉え、多様性や活気ある社会づくりに、この新しい法律の在り方を試すことが大切だろうと思います。

2023年度の組合方針は意見反映を基礎に置きます。新規事業の計画、委託事業、指定管理、社会連帯活動では、田んぼの取り組みや、日本労働者協同組合連合会が進めている「小農・森林ワーカーズ全国ネットワーク」への参加、障害福祉、生活困窮者等支援に取組んでいきます。
実践する私たちの自らの仕事だけでなく、現実に私たちのまわりに居る困難を抱えた人や働く場を失くしてしまった人たちの支援や仕事を作ることが、私たちの社会的な役割です。新たな目標に向かって全組合員が心を一つにして全力を挙げて取り組んでいきます。

  • 虹ヶ浜海岸清掃の様子

基本情報

法人名  労働者協同組合ワーカーズコープ山口
事業所の所在地  山口県光市大字立野字一ノ瀬1072
設立  1980年 5月
(1980年企業組合法人格を取得、2023年4月労働者協同組合に組織変更)
事業内容  一般土木・緑化・ビルメンテナンス・指定管理・放課後等デイサービス
組合員数  45人
組合員の年代別構成  20代~70代
組合員以外の就労者  5人
売上高  1億3千万(2022年度実績)
出資1口の金額  5万円
出資の総口数  240口

(令和5年9月末現在)