労働者協同組合ワーカーズ・コレクティブ・グラン(令和5年4月設立)

みんなのアイデアの結集、より良い仕事と働き場を求めて

労働者協同組合ワーカーズ・コレクティブ・グランは、愛知県名古屋市、豊田市を中心に事業を展開しています。生活クラブ生協の組合員への配送、各センター及び本部の事務、パン製造会社から生活クラブ生協の各センターへの配送作業等が主な業務です。安心安全で暮らしやすいまちづくりを生活クラブ生協の組合員とともに目指しています。2023年4月企業組合から労働者協同組合に組織変更しました。

これまでの活動の経緯

生協組合員による労働参加のスタート

労働者協同組合ワーカーズ・コレクティブ・グラン(以下、グラン)は、生活クラブ生活協同組合(以下、生協)が個別配送導入を決めた2004年、同時に生協組合員の労働参加による別事業体として結成しました。結成に当たり、私たちが選択したのは「ワーカーズ・コレクティブ」という働き方でした。同じ想いの仲間が出資し合い、対等平等な関係の中で、全員が事業と組織の運営に関わり働く主体的な働き方です。

起業ももちろん、すべてが全員参加型

ワーカーズ・コレクティブとは何か、私たちがやろうとしていることを広く発信し、集まった意志ある仲間と設立準備会を立ち上げ、設立総会に向けて準備を始めました。
一番時間をかけたことは、原点でありグランの存在意義でもある設立趣意書づくりと名称決めです。私たちは、この事業を何のためにするのか、事業や働き方を通して何を解決したいのか、時間をかけ、自分たちの言葉を紡いで設立趣意書を作りました。

名称であるグランの由来は、グランマ(Grandmother)。おばあちゃんになっても働ける場所でありたい。でも将来的にはおじいちゃんもメンバーとして参加しているかも…ということで「マ」も「パ」も取って「Grand(グラン)」にしました。Grandの意味には壮大とか堂々とした等、素晴らしい言葉が並びます。名前に負けないよう、誇りをもってスタートしようと、8人でまずは人格なき社団として設立しました。

これまで、生協組合員として、主体的にボランタリーな活動に参加してきたメンバーにとっては、職業とか生業にするという意識よりも、暮らしやすい社会に変えるために、大好きな運動に別のカタチで参加するという意識の方が強かったかもしれません。
とはいえ、1トン車を運転して配達業務にあたるわけですから、設立総会から事業の本格始動までの3か月間は、安全運転や配達業務の研修、事業や組織運営に必要な道具づくりを「ああでもない、こうでもない」とアイデアをみんなで出し合い整えていきました。

2012年、企業組合の法人格を取得

事業は順調に進捗し、2011年、代表個人が無限で負わなければいけない責任を回避すること、メンバーが増え働く場の環境整備がさらに必要になったと判断し、企業組合の法人格の取得を総会決定し2012年度から再スタートを切りました。

働く仲間とグランのさらなる発展を求めて

2017年「長期計画プロジェクト」を設置し、5年後のグラン、5年後の私をテーマに5か年計画の策定をしました。意志あるメンバーが参加し「働きやすい、働き続けられる、やめないグラン~メンバーの満足度をあげる」を打ち出したり、分配金(給与)の支払い規定も設立当初から3回プロジェクトを設置し抜本的な見直しをするなどの取組もすべて主体的な参加で行っています。

  • 長期計画プロジェクト設置前のワークショップの様子

活動に当たり大事にしていること(意見反映の方法等)

モノを届けるだけが私たちの仕事じゃない

私たちは、トラックを運転して、消費材(※)を生協組合員にお届けするだけではなく、生協組合員とコミュニケーションをとり、ケアに努めます。また、生協運動を伝える役割も果たします。中には困りごとや、わからないことへの相談等、毎週の対面の中での気づきは、持ち帰りアウトプットすることを心がけています。

※生活クラブ生協では「商品」の問題点を生活者の視点で見直し、「売るためのもの」ではなく「消費するためのもの」と言う考えから共同購入する「もの=材」を商品と呼ばずに「消費材」と呼んでいます。

配送を行うメンバーは養成講座を受けた認知症サポーターでもあります。高齢の組合員の方も増えてきています。注文の仕方に変化があったり、言動にも細やかに注意を払います。生協とも相談し、ご家族につないだり、地域につないだりすることもあります。みんなで見守る、暮らしやすい地域づくりに貢献することも私たちの使命です。

持続可能な地域社会づくりは持続可能なワーカーズ・コレクティブの現場から

グランが労働者協同組合法人に変更した理由は、自分たちの強みをさらに発揮し、持続可能なワーカーズ・コレクティブの現場をつくることで、持続可能な地域社会づくりに、協同組合らしく正直、丁寧に取り組むためです。
20年前設立時に決めた趣意書「何を大切に業務を行い、そのことで何を目指すのか」を具体的年度方針として、毎年、みんなで決めて業務に当たり振り返り次につなげるというワーカーズ・コレクティブの実践は、これまで通り何も変わることはありません。

現在、44人の組合員が、3つのブランチ(事業所)に分かれて働いています。グランとしての年度方針の他に、ブランチの年度目標をそれぞれ決めています。全員参加を基本とする月1回のブランチ会議では、安全運転、日常業務、活動や目標の点検、理事会提案に関する議論、学習等を2時間程の時間で行います。労働者協同組合になってからは、ブランチ報告の書式を変更し、話し合いで出た意見、理事会に対する意見や質問も記入できるよう工夫しました。

話し合いで納得度を高め、自分たちで決める

同じ想いで集まった仲間でも、人数が増えれば、年齢差やスキルの差も拡がり、意見も多様になります。総会議案で方向性や目標は一致していても、日常業務の進めかたや対策案等、必ずしも初めから全員が一致できることばかりではありません。会議では、多数決で決める事柄はほとんどなく、意見を出し合い納得度を高めていきます。欠席したメンバーには、会議で話し合われたことを伝える役割の人を決めて、もれなく伝わるように工夫しています。

  • ブランチ会議の様子

活動に当たり生じた困難や課題、それに対する対応

チームワークでミスを防ぐ

消費材は温度帯別に管理し届けるため、配達先でピッキング(伝票に基づいて取り出す作業)をします。そのため、届け忘れや間違いが起こりやすいのですが、生協組合員の信頼を得るためにも配達業務をする上で、一番大事なことは間違いなく届けることです。

  • 確認しながら間違いなく届けます

グランでは、ミスをなくすための標語を全員から募集し、「声だし指差し確認、Wチェックの徹底、あわてず落ち着いて」、この3つを「NOミス3原則」として朝礼で唱和しています。

事故やミスの報告は、起こした人を咎めたり、叱責したりすることが目的ではなく、同じミスをみんなが繰り返さないよう、自分事として受け止め共有することを目的としています。一人のミスとせず、ブランチというチームワークで、仲間の弱点を声を掛け合うことでカバーし合い、事故やミスを全員で減らす取組もしています。

今後の方向性

次の世代に引き継ぐ「働きやすい、働き続けられる、やめないグラン」

配送の仕事は、トラックの運転が必要かつ体力勝負で仕事に就くにはかなりハードルが高いため、なかなか働く人が増えません。メンバーの高齢化も進んでいます。長期計画のテーマである「働きやすい」の追求は、体力的に難しい世代のことも考慮して、ハードルが高い1トン車ではなく、軽トラックの導入を考えました。多様、多世代のメンバーを増やすためにも必要な配送形態に取組んでいます。

  • みんなで作った募集チラシ

「働き続けられる」は、今いるメンバ―がずっと働き続けられるように、分配金(給与)規定の見直しと働く環境をさらに整備していくこと。これは、労働者協同組合になったことをきっかけに福利厚生も充実させることができました。
「やめない」の取組は、今後の大きな課題です。グランの定年は70歳。その後本人の意志と組合の了承があれば何歳まででも働けます。これを実現するためには、新たな仕事の創出が必要です。長年働いてきた、経験とスキルをどんな形で生かせるか。全く別の分野の仕事も含めて、持続可能で活力ある地域社会づくりのために緩やかに関わりながら働きがいと生きがいを継続できるようみんなで考えていきたいと思います。

  • 組織変更のための臨時総会の様子

基本情報

法人名  労働者協同組合ワーカーズ・コレクティブ・グラン
事業所の所在地  愛知県名古屋市天白区野並1丁目120番地
設立  2004年6月29日
(2012年企業組合法人格を取得、2023年4月労働者協同組合に組織変更)
事業内容  生活クラブ生協の業務請負(配送、事務等)
組合員数  44人
組合員の年代別構成  30代~70代
組合員以外の就労者  0人
売上高  6,865万円(2022年度実績)
出資1口の金額  5000円
出資の総口数  486口

(令和5年3月末現在)