CampingSpecialist労働者協同組合(令和4年10月設立)

Camping(キャンプ)で、人に価値を与える志事(仕事)を創り出す

CampingSpecialist労働者協同組合は、キャンプ場の運営や野外活動を通じて、荒れ地を「持続可能な愛される土地」に、「多様な仕事が生まれることで、あらゆる人財(人材)に価値を創り出す」ことを目指して活動しています。2021年に当初NPO法人として設立し、2022年10月にNPOの法人格を残しつつ、労働者協同組合を設立しました。

これまでの活動の経緯

三重県四日市市で、自分たちでテントが張れる遊び場を作ろうと活動を始めたグループがありました。そのグループは、土木建築会社の社長やインテリア会社の代表取締役、市議会議員というキャンプ好きなメンバーが集まり、そのメンバー間での「他愛のない話」から、この法人設立のきっかけが生まれました。

はじめは燻製づくりから

最初は、グループのメンバーたちが集まり、庭先で誰でも手軽にできる燻製づくりをしていました。その時に「市内にはテントを張ることのできるキャンプ場がない」という話題から、「それならば、自分たちでテントを張れる遊び場を作ろう」という話が出て、この法人設立のきっかけになりました。

NPO法人設立へ

グループの中で場所を探す中で、ある人が見つけてきたのが山の中腹にある荒れた山林原野でした。そこは、不法投棄がされており、よい景色はなく、川遊びもできず、隣に養鶏場が立地している市有地でしたが、メンバーで話し合い、そこを自分たちで切り拓き開くことに決めました。市から安価で土地を借りるためには法人格が必要になったため、NPO法人を設立しました。

開墾作業は協同作業で

メンバーで鎌やのこぎりを片手に、雑木林に入り切り拓き、伐倒ができる場所を確保した後は、チェーンソーで木を一本一本倒し始めました。すると「ここは今後どうなる予定なのか?」「手伝わせてもらえませんか?」と興味を持った仲間が集りだしました。そして、10名を超えるメンバーと共に山の開墾を広げていきました。一方で、NPO法人の設立に当たってキャンプ場の起業を相談した起業コンサルタントからは、「この起業は失敗する姿しか思い浮かばない」と言われました。

本気で取り組んだら成功しかない

「遊びに本気で取り組んだら成功しかない!」を合言葉に、2020年からの2年間で14,400㎡(4,363坪)を切り拓きました。そして、開墾から2年。ついにキャンプ場が設立されました。もともと自分たちの遊び場をつくろうと始めた活動でしたが、一般の方からのキャンプ場の利用希望もあったため、SNSを通じて利用予約を募り、そのPRに当たっては「水無し、トイレは汲み取り、風向きによっては養鶏場の匂いがあります」という留意事項も記載した上で、安価な利用料金を設定しました。利用料金が安価であったことが影響してか、2022年1年間で2,500件の利用があり、収益も生むことができました。

浮き彫りになった課題から労働者協同組合法人の設立へ

キャンプ場の利用者が増加し、NPO法人としての活動が拡大していく中で、様々な課題に直面しました。どんどん仲間が増えていく一方で、運営への関与度が低く少し手伝いに来ただけの方がメンバーの一員だからと自分勝手にキャンプ場を利用してしまうなど、必ずしも運営に日々取り組む仲間達と協調性を持てない人も出てきました。また、時間の経過とともに、メンバーの中には全く運営に関わらなくなる方も出てきました。
様々な課題にぶつかる中で、「地縁、土地への敬意、フィールド遊びと青少年育成」など、「私たちの価値観を共有できる仲間と共に働きたい」という考えが芽生え始めました。
そのような中、「雇う雇われるという関係ではなく、志を同じくする仲間が共同で出資し、労働契約も結び、運営も一緒に行う」という労働者協同組合の存在を知り、この働き方こそ自分たちのあるべき姿だと確信して、労働者協同組合を設立することにしました。

全国で第一号の労働者協同組合法人設立

労働者協同組合法が施行された2022年10月1日(土)に法人の事務所に公告を貼りだし、10月15日(土)には創立総会を実施し、10月17日(月)に地方法務局に登記の手続きを行いました。
法務局とのやりとりは多少ありましたが、10月21日には登記も終了し、行政庁である三重県にも関係資料を届けることができました。様々な困難がありましたが、無事に労働者協同組合の設立が完了しました。労働者協同組合としての法人格取得は全国でも最も早く、三重県でも一番早い設立でした。そのおかげでメディアから取材を受け、情報発信がされました。

NPO法人の法人格を残しながら労働者協同組合法人と併存したハイブリット運営

上述のとおり2020年にNPO法人を設立しましたが、出資とともに雇用契約を結ぶことで一定の責任を持ちながら皆で働く労働者協同組合の哲学に魅力を感じ、2022年にNPO法人格を残しつつ、労働者協同組合を設立しました。
労働者協同組合は組合員と雇用契約を結ぶことが原則となることから、労働者協同組合がキャンプ場運営の基盤を担い、NPO法人格は働くことはできないが活動に参加する人の受け皿としました。また、労働者協同組合が荒廃した茶園を畑に改良し、その畑で市内の保育園児が野菜の作付けから収穫を行ってキャンプ場で食べるといった公益事業をNPO法人格で企画するなど、それぞれの法人格の特性を活かし、ハイブリット型での運営を進めています。

活動に当たり大事にしていること(意見反映の方法等)

とにかくやってみることが大事

労働者協同組合の働き方、いわゆる協同労働をどう現場で活かすのかについてはまだまだ模索中なのです。ただし、一番大切なことは、「考えたことはまず口に出す、口に出したらやってみる、とにかく動いてみること」であると考えています。
私たちも、最初は仲間の一言から山を1つ借りて、チェーンソーや重機も扱ったことがない素人が自分たちで山を切り開いて、何もないところから試行錯誤してキャンプ場を創り運営してきました。

そして、労働者協同組合では、働く人自らが出資するため、運営への当事者意識が芽生えます。今のメンバーはキャンプ場をただ利用したいという想いだけではなく、それぞれがキャンプ場の運営を考え、何かしらの形でその運営に貢献したいという方々が集まっているので、法人として持続的な運営を目指せるようになりました。

市内で一番人気のイベントに

四日市市役所が開催した中央通り再編に向けた賑わい創出社会実験イベント「はじまりいち」では、広場でさまざまなイベントが開催されるなか、薪割体験、ハンモック、テント体験、キャンプ飯やキャンプグッズ販売を行った私たちの企画に6,800人と一番多くの人が参加しました。

今後の方向性

キャンプ場✕地域振興✕労働者協同組合を広げる

労働者協同組合設立後、近隣の市町村から放置された荒廃山林の整備やキャンプ場経営を通じたまち起こしの相談が届いています。すでに5件ものキャンプ場整備の依頼が県内外の自治体から入ってきています。今度は、私たちと同じような志を持った方を応援していきたいと思っています。

自分たちのキャンプ場の整備・運営に留まらず、他のキャンプ場の整備・運営のサポートの仕事もできればと考えています。その際、労働者協同組合による設立・運営を提案し、地域課題になっている荒廃した土地を、地域の人々の労働により開墾し、地域住民及び利用者による持続可能で愛される土地として再生していくことを提案していこうと考えています。 
例えば、近隣の海辺の町では「海岸の清掃を行っているが、高齢化が進んでいて担い手がいない」といった困り事があります。そういったことを「海岸清掃×キャンプ×労協」で集客を行い、地域を盛り上げていこうと思っています。
労働者協同組合の魅力をどんどん発信して仲間を増やしていきキャンプで地域活性化を行い、その輪を広げていく、今後そういった流れができればいいと思っています。

基本情報

法人名    CampingSpecialist労働者協同組合
事業所の所在地   三重県四日市市平尾町2800番地2
設立   令和4年10月17日
事業内容  キャンプ場の開発・運営
組合員数   5人
組合員の年代別構成   30代〜50代
組合員以外の就労者   0人
売上高  約900万円(年間見込額)
出資1口の金額 5000円
出資の総口数   50口

(令和5年2月15日現在)