労働者協同組合ワーカーズコープちば(令和4年12月設立)

誰もが出番と居場所のある「地域共生社会」づくりを!

ワーカーズコープちばは、1987年に千葉県船橋市で、中高年齢者の働く場として前身となる団体を創設し、その後、物流・清掃から高齢者福祉分野へと事業を広げ、近年は生活困窮者支援の取組を強化し、地域で必要とされる仕事おこしの活動を進めています。

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(好事例:労働者協同組合ワーカーズコープちば)私たちは、こうして労働者協同組合を設立しました!

これまでの活動の経緯

始まりは、大規模団地でのまちづくり

ワーカーズコープちばの本拠地である千葉県船橋市高根台は、UR(当時は公団住宅)の大規模団地があり、高度経済成長時代には、東京のベッドタウンとして多くの人たちが移り住んだ場所です。高根台地域は、公団の団地ができた当時は生活環境が整っていなかったため、自治会や住民自身が行政や公団との話し合いの中で生活環境の改善を進めてきた歴史があります。

1980年代後半になると、団地に暮らして東京に通勤していた多くの人々が定年の時期を迎えるようになり、なかには地元に戻ってもっと働きたいと希望する人もいました。そのため、地域の生協づくりや団地での自治会の活動などの様々な活動を担ってきた人たちの呼びかけで、全国の労働者協同組合の活動を学んで、1987年に中高年の働く場を作ることを目的の一つとして、ワーカーズコープちばの前身である「船橋地域中高年雇用福祉事業団」が設立されました。

中心は、人が集まってできる仕事

7人からスタートした前身の団体は、当初、生協の物流センターの仕事や地域の方々の紹介による病院清掃などの仕事が中心でしたが、その後、生協の物流センターの移転によりこれらの仕事がなくなることに直面しました。

そこで、代わりに自分たちで仕事を起こそうと関係者で話し合い、2000年に介護保険制度が始まったこともあり、高齢化社会に向けて皆で地域福祉に取り組むことにしました。ヘルパーの養成講座を行い、修了した人たちが集まって、2002年に「ヘルパーステーションゆりの木」を立ち上げました。この時までは、任意団体(みなし法人)として活動を続けてきましたが、介護保険事業の実施には法人格が必要であったため、「労協船橋事業団」として初めて企業組合の法人格を取得しました。その後も民間の事業は任意団体で、公的な制度事業や委託事業は企業組合で、と2つの団体を併存させながら、運営は一体的に行ってきました。

2010年には、これまでの船橋市より広いエリアでの仕事起こしを目指し「ワーカーズコープちば」と名前を変更しました。ただし、企業組合法人の名称については、将来的に労働者協同組合に関する法人制度ができた際に労働者協同組合に移行することを見据え、「労協船橋事業団」のままとしました。そして、2022年12月に20年に念願が叶い、企業組合から労働者協同組合に法人格の移行(組織変更)を行いました。

活動に当たり大事にしていること(意見反映の方法等)

話し合いを大切にする

ワーカーズコープちばは、働く人自身が、お金を出し合い(出資)、自分たちで自らの経営に責任を持つ(意見反映)働き方をしています。
具体的には、様々な人が一緒に働く、あるいは働く仲間同士が助け合うことのできる職場を目指しています。

運営に当たっては、どうやったら組織がうまくいくか、皆で労働条件を話し合って決めていく必要がありますが、現在、213名の組合員がいるなど、規模が大きい中にあっては、時として一人ひとりの意見を尊重することは難しい場合があります。そこで、現在、月に1回は職場会議、地域ごとのエリア会議、全体方針を決める理事会をそれぞれ開催することとしています。会議の数も増えますが、一人ひとりの意見を尊重しながらの合意形成をないがしろにすると、話し合いを大事にする労働者協同組合の意見反映ではなくなってしまうため、その点にはこだわっています。

法人格の移行時も十分な話し合い

ワーカーズコープちばでは、上述のように当初から労働者協同組合に関する法制化が実現した際に法人格を移行することを前提としてきたので、特に法人格の移行に大きな反対はありませんでした。
一方、組合員全員で話し合ったところ、出資については様々な意見がでました。労働者協同組合では、組合員は、加入する際に出資が必要となります。今までは、1口の出資金(5万円)を組合員の要件としてきましたが、一度には払えず積み立てている人もいました。ところが、法律上、積立期間中は組合員とは認められず、労働者協同組合の要件として、働く人たちの4分の3以上が出資した組合員でなければならないため、これらの要件を満たせなくなる可能性がありました。生活困窮者や学生などが組合員になりにくくなるのではないかという議論もあり、最終的には法人格の移行に当たり、定款上の1口の出資金額を1万円に下げることとしました。

また、法律上では労働者協同組合は組合員と労働契約を結ぶことが必須となりますが、子ども食堂や高齢者サロンなど、採算性の低い事業が中心となると最低賃金を払うことは容易ではなく、そのような活動を組合の事業として行うかどうかも悩ましいところです。収益はなくとも必要な方々の多い社会貢献的な部分を組合として実施することがいいのか、まだまだ組織として話し合いが必要であり、工夫のしどころがあると思います。

地域課題の解決を大切に

近年、ワーカーズコープちばでは、生活困窮者支援の取組を強化しています。10年ほど前に生活保護受給者の就労意欲喚起事業を受託したことをきっかけに、2013年以降、生活困窮者自立支援法の自立相談支援事業、就労準備支援事業、一時生活支援事業、学習支援事業などの受託を通じて、伴走型支援を続けています。

また、2012年からは、「フードバンクちば」を設立し、企業や個人等から食品をいただいて、生活困窮者や福祉施設などへ無償で提供をしています。食品の寄贈については、県内市町村の社会福祉協議会と連携し、100か所の受取窓口を通じて、フードドライブを行っているほか、県内の各生活協同組合と合同でフードドライブキャンペーンを行っています。フードバンクは、就労困難者のみならず、企業や学校、市民団体が集まり、地域の課題解決に取り組むプラットフォームとして地域の中の貧困問題に向き合っています。

また、子ども食堂の利用者から、「公立中学校の制服や学用品が高い」といった声が上がったため、「ふなばし制服バンク」が始まりました。市内15か所にある回収場所に、使わなくなった制服を提供してもらい、制服バンクで状態をチェックし、クリーニングした後に安価な価格で販売しています。これらの名前の刺繍取りには介護予防事業の利用者が活躍したり、制服のクリーニングには市内の障害者就労支援A型事業所で働いている方々が活躍するなど、制服バンクは様々な方々が活躍する場にもなっています。

活動に当たり生じた困難や課題、それに対する対応

労働者協同組合の法制化への思い

ワーカーズコープちばは、設立当初から労働者協同組合として活動していました。一方で、労働者協同組合としての法人格がないため、企業組合やみなし法人の2つの団体として活動をしていたため、私たちが望む働き方や目的を必ずしも体現できない、もどかしさもありました。また、誰もが労働者協同組合法人を使って多様な働き方や地域に必要な仕事を作れるような社会を目指したいという思いもありました。

2020年12月に国会で法案が可決された際はとてもうれしかったですし、多くの労働者協同組合で働く人たちの日々の実践がようやく形になったと思いました。今後は、誰もが労働者協同組合を作れる時代に入るので、新しい分野での仕事起こしがどんどん広がっていくことを期待します。一方で、形だけではなく、本当に自分たちが日々積み重ねてきた協同労働への想いや協力して働くことの楽しさや大変さも伝えていければと思います。

今後の方向性

労働者が労働者のままで自分たちの意見を組織運営にきちんと反映させながら仕事をしていくというのは、言葉で言うほど簡単なものではないと感じています。
ただ、雇われて働く、ということが労働の全てでないこともまた事実であり、労働者協同組合法の成立を通じ、単なる雇用労働者でもない、また、自営業者でもない、皆と協力して働くという、第三の働き方が日本でようやく認められました。誰かひとりが頑張るのではなく、みんなで苦労や責任を分かち合い、成果もみんなで分かち合う働き方が日本で根付いていくかどうかは、これからだと思います。そういう働き方を目指したい個人・法人のみなさん、是非、労働者協同組合法を活用してください。

Youtube動画-労働者協同組合ワーカーズコープちば

基本情報

法人名    ワーカーズコープちば
事業所の所在地   千葉県船橋市高根台6—2—20
設立   1987年3月7日
(2002年7月5日企業組合法人格を取得、2022年12月11日労働者協同組合に組織変更)
事業内容   ビルメンテナンス、倉庫内業務、環境緑化、食堂・売店、高齢者介護、障害者支援、生活困窮者支援、職業訓練、社会連帯(フードバンク、子ども食堂など)
組合員数   213人
組合員の年代別構成   10代〜80代
組合員以外の就労者   36人
売上高  約5億2800万円(2021年度)
出資1口の金額 1万円
出資の総口数   2530口

(令和5年1月16日現在)