労働者協同組合労協センター事業団
地域密着型デイサービス「そらまめ」
(令和6年4月設立)

自分の親を預けたいと思える、こだわりのデイサービスを作る

労働者協同組合労協センター事業団ふじみ野そらまめ地域福祉事業所が運営する地域密着型デイサービス「そらまめ」は、埼玉県ふじみ野市で「自分の親を預けたいと思えるデイサービス」を作ることに、徹底してこだわって運営しています。農作業を機能訓練として位置づけ、利用者と一緒に野菜を育て、おいしく健康的な食事を提供しています。

これまでの活動の経緯

「農と食」を活かしたデイサービス

地域密着型デイサービス「そらまめ」の拠点の平屋づくりの民家の周りには畑が広がっています。農家の風景をそのまま活かし、ほっとできる、おだやかな空間ができています。自慢のランチは、毎朝畑から収穫した野菜で作ります。野菜の苗は購入するより種から苗を作りたいとの声が仲間内から挙がったこともあり、みんなで育苗ハウスを建て、苗を育てています。育てた苗は、毎年地域の方々、深谷、所沢、越谷、戸田の事業所に分けられるまでになりました。「そらまめ」では、農作業を機能訓練として位置付けているため、植え付け、収穫や調理に関わる色々な作業を利用者とみんなで行います。土に触れ、野菜を育て、収穫して、一緒に食べる料理は、おいしくて健康的な食事にもつながります。

  • おだやかな空間が広がる「そらまめ」の事業所

きっかけは、震災被災者支援の地域活動

「そらまめ」の活動は、2011年の東日本大震災で被災して、埼玉県ふじみ野市の公務員住宅へ避難されていた方々に、地域の市民で支援活動を始めたことがきっかけでした。何が必要なのかを聞くため、交流会を継続的に開き活動を広げていきました。その中で、「息が詰まりそう…畑がしたい」という想いを聞き、市内の農地を借り、支援活動に共感していただいた農家の方々の協力を得て、一緒に農作業を開始しました。共に土に触れ、作物を育て、収穫して、料理して、わいわいと食べることを通じて、参加している人みんなが笑顔になりました。現在の活動は、この経験に強い影響を受けています。

  • 収穫した野菜を料理した栄養満点のご飯

活動に当たり大事にしていること(意見反映の方法等)

地域を支える活動の拠点を作ろう

持続的に地域活動を続けていくための拠点として事業所を立ち上げようと、運営に関わる仲間全員で話し合いが行われました。「避難して来られた方々を継続して支援したい」という声があがり、具体的にどのような事業で支援していくのかをみんなで考えるなかで、避難をして来た方々の中には慣れない土地で高齢のご家族の介護に課題を抱えた方がいらっしゃったことから、デイサービスを事業の核に据えることが決まりました。「自分の親を預けたいと思えるデイサービス」という方向性もみんなで決めました。

組合員みんなで想いを語り、それぞれのやりたいことを出し合い、やってみるという循環をおこす。そして、みんなの「想い」の引き出しを開けて、夢を一緒に実現していく。そういったことを繰り返して、地域の力で運営されるデイサービスができました。

今でも「そらまめ」のデイサービスは、組合員みんなで話し合い、利用者や地域の方々からの声を大切にしながら運営しています。

  • 昔ながらの農家の風情が生きる干し柿づくり

活動に当たり生じた困難や課題、それに対する対応

地域を支え、地域から支えられる

当初は普通の一軒家で活動を始めましたが、畑が前にあったらいいなという思いが強くなり、不動産屋めぐりをはじめました。物件探しに苦戦する中、地域の民生委員さんから声がかかって現在の民家と出会いました。家賃も安く周辺の環境もばっちりです。しかし、築60年の民家をデイサービスに供与するには改築工事費用が約1000万円かかると言われてしまいました。

覚悟を決め、地域の方や利用者家族などに声をかけて、組合員の出資金と協力債(※)で1000万円集めることを達成できました。地域の役に立ち、その価値を感じてもらえる仕事をつくりたい。そのことを呼び掛けると、地域は応えてくれることを知りました。

※協力債とは、新規事業立ち上げ時等に関係者や地域の方々に広く呼びかけ協力いただく債券のこと、1口は1万円

また、近年の介護事業の経営は厳しさが増していて、地域の様々な人たちの支えなしには全く成り立ちません。地域の想いを拾い、手を貸してくださる方々につなげて、みんなで作ってきたからこそ、今のこの取り組みは成り立っています。

  • 利用者家族や地域に支えられている「そらまめ」の農園

今後の方向性

持続可能な地域をつくる

「そらまめ」は東日本大震災をきっかけに活動を始めたこともあり、地域に眠る自然エネルギーを活用しエネルギーの地産地消を実現したいと考え、埼玉県の助成金を活用して事務所が入る平屋の屋根にソーラーパネルを設置しました。こうした想いに共感をしていただき、「そらまめで組合員になって働きたい」という方が仲間に加わりました。

  • エネルギーも自給自足をとの想いから設置したソーラーパネル

また、新たな試みとして、環境と利用者の健康に配慮するために断熱改修工事を行いました。断熱は健康と環境問題にも繋がることもあり、「そらまめ」で働く組合員の関心も高いものがありました。施工後は利用者の方からも「エアコンが付いていなくても暖かい」との声があり、光熱費の削減にも大きく貢献しています。

断熱改修工事の有識者の方とも繋がることができて、市民の方々を参加対象とした「断熱セミナー」を2回開催し、市長にもご出席いただきました。多くの方が関心を寄せているテーマでしたので、その流れで様々な団体と連携し、子どもから大人まで楽しめる気候変動を考えるワークショップイベント「ふじみ野エコラボ」をふじみ野市の後援を得て開催しました。

こうした環境にも配慮した取り組みも大事にし、食も、エネルギーも、ケアも、地域で循環して支えあう、持続可能な地域づくりを目指して「そらまめ」は日々運営しています。

基本情報

法人名  労働者協同組合労協センター事業団
事業所名  ふじみ野地域福祉事業所デイサービス「そらまめ」
事業所の所在地  埼玉県ふじみ野市川崎232−1(本部は東京都豊島区)
設立  2012年4月に「そらまめ」を開所
(企業組合労協センター事業団は2024年4月1日労働者協同組合に組織変更)
事業内容  地域密着型通所介護
組合員数  21人
組合員の年代別構成  30代〜70代
組合員以外の就労者  2人
売上高  3.300万円(2025年度見込額)
出資1口の金額  5万円
出資の総口数  168口

(令和7年4月末日現在)