ワーカーズ・HIOKI労働者協同組合(令和6年12月設立)

「食」と「環境」を中心に、地域の力で暮らしを支える

鹿児島県日置市で誕生したワーカーズ・HIOKI労働者協同組合は、お弁当の配達事業や除草作業など地域の暮らしに密着した悩みごとを事業として解決しています。行政でも民間事業者でもなく、労働者協同組合だからできることを目指し、試行錯誤しながら、「仕事づくり」「人づくり」「地域づくり」を大切に活動しています。

これまでの活動の経緯

協同組合での経験から地域課題解決の取り組みへ

「ワーカーズ・HIOKI労働者協同組合」は、2024年6月頃、「生活協同組合コープかごしま」を退職した一人のメンバーが提起したひとつの思いから始まりました。「いま地域にある生活協同組合(以下、生協)という組織だけでは、地域への今後の対応に困難が出てくるかもしれない。地域の高齢化が進む中、さらに暮らしに密着した問題を解決する仕組みが必要なのではないか」という地域への思いでした。

「それならば、具体的な地域社会(市町村・自治体など)との関わりをどうしたらよいか考えてみよう」と検討を重ねていたところ、2020年12月に労働者協同組合法が国会で成立し、2022年10月に施行されたのを知って、それまでのボランティアなどの活動とは少し異なる「労働者協同組合」という新しい理念の新たな組織づくりが適しているのではないか、と気づいたのです。

当時、同じ思いを持っていた仲間たちが前職を退職したのを機に、2024年12月、「ワーカーズ・HIOKI労働者協同組合」(以下、ワーカーズ・HIOKI)を設立しました。設立の背景には、「すべての人が社会や地域で安心して生活できる包摂的地域社会、地域循環型経済社会が求められている、世界的には協同組合の果たす役割に期待が高まっている」という社会情勢が土台にありました。

そこで、ワーカーズ・HIOKIでも、労働者協同組合の基本原理である、
①組合員が出資すること 
②組合員に意見が適切に反映されること 
③組合員が組合の行う事業に従事(労働)すること 
という三つの基本原則に沿って、「誰一人取り残さない」地域社会づくり、「地域で暮らす人々の願い」と「地域課題の解決」に向けた仕事(事業)と活動を、地域と一緒になって進めることにしました。
事業を通じて多様な就労の機会を創出するとともに、ワーカーズ・HIOKIを通じて地域における多様な需要に応じた事業の創出と実践を促進し、持続可能で活力ある地域社会の実現に資することが目的です。

2025年4月1日、いよいよ実際の活動が始まりました。事業開始にあたり、ワーカーズ・HIOKIは、「仕事づくり」「人づくり」「地域づくり」を大切にする思いを明確にし、以下のような理念を定めました。

<ワーカーズ・HIOKI労働者協同組合がめざすこと>

  1. ワーカーズ・HIOKI労働者協同組合は、「だれもが安心してくらし続けられる“まち”づくり」の実現を地域や他団体との連携で実現します。
    (多様な働き方を実現しつつ、地域の課題に取り組みます)
  2. ワーカーズ・HIOKI労働者協同組合は、「食」と「環境」を中心に、くらしの課題を地域と共有し、地域とつながることを大切にした事業と活動(運動)を進めます。
    (私たちの仕事(事業)は、地域の人々にとって必要だから始めます)
  3. ワーカーズ・HIOKI労働者協同組合は、「働きたい」「人とつながりたい」などの想いを大切にし、働きたくても働けなかった方、障がいのある方もいっしょに仕事(事業)と活動(運動)を行います。
    (地域の中で、それぞれの役割ができ、地域づくりの担い手となります)
  • 創立総会後の集合写真

活動に当たり大事にしていること(意見反映の方法等)

地域の暮らしに密着した悩みごとを解決したい

ワーカーズ・HIOKIの主な活動は、お弁当の配達事業と地域住民から依頼された除草作業を通して、地域の暮らしに密着した悩みごとや困りごとを解決することです。

お弁当の配達は、生協から依頼を受けた配達に加え、高齢者施設からの依頼も受けて地域の仕出し弁当業者と一緒に高齢者の健康を考えたお弁当をお届けしています。
お弁当の配達をしながら、高齢者の体調や様子に変化がないか見守りも兼ねて仕事をしています。また、配達したときに利用者とできるだけ話をする時間をつくり、日常生活で困っていることはないか話を聞くようにしています。その中には、自分では自動車の運転が難しくなったが公共交通機関が少なく移動手段で困っている方や、電球の交換を自分でできなくなって困っている方もあります。今後、このような困りごとにも対応していきたいと考えています。

また、除草作業は、地域で障害者就労支援を行うNPO法人と業務提携して一緒に取り組んでいます。 
除草作業をともに行う障害者支援施設とは、地域で収穫された大きなみかんの直売会を市役所で一緒に行い、地域の方々と交流を図る機会をつくっています。これから、さまざまな機会を通して、地域の住民とつながる取り組みを広げていきたいと考えています。

  • 障がいのある人たちと共に市役所でみかん販売会も行う

情報共有と話し合いを大切に

日常の運営や計画づくりで一番大切にしていることは、組合員(現在6名)でよく話し合い、相互理解を踏まえて実践することです。日々の実践を通じ、「なぜ労働者協同組合を設立したのか」「地域との関わりをつくるにはどんな工夫が必要なのか」などを、折に触れ共有しています。日常的には、お弁当の配達や除草作業を行う前に時間をつくり、作業の内容だけでなく、ワーカーズ・HIOKIの運営状況の共有、今後の活動内容について話し合い、組合員一人ひとりの意見を取り入れながら活動しています。

新しいことを行う際には、組合員だけでなく、連携する生協や地域の団体などとも密に話し合いながら取り組みを進めています。理事会は年に3回開催していますが、そこでは通常理事会で話し合われる内容のほかに、ワーカーズ・HIOKIの長期的な事業戦略や構想について、時間をとって話し合っています。

市民による地域の自治(コモンズ)をつくりたい

事業の実施にあたっては、可能な限り、地域の人たちとコミュニケーションを取り、地域の方々が主体的にワーカーズ・HIOKIに関われるよう心掛けています。
行政でもなく、民間事業者でもなく、また団体主体でもなく、「自分たちの地域は自らが治めるのが本来の自治である」ことを地域の人たちに理解してもらいたい、ワーカーズ・HIOKIの活動をもっと多くの人に知ってもらいたい、そんな思いを持って、市民自身が生活の困りごとを解決する「市民による地域の自治(コモンズ)」と「地域で循環する経済」をつくることを大事に運営しています。

設立して日は浅いですが、毎日の生活課題を解決するためのサポートや地域をつなぐ役割を 、ワーカーズ・HIOKIが一つひとつ実践して役に立ちたいと考えています。そして、労働者協同組合の事業を通して、同じ市民が生活の困りごとを解決する取り組みを行っていることを知ってもらうことで、自分たちの理念に賛同して共に活動する人が増えることを期待しています。

  • お弁当の配送を行う様子

活動に当たり生じた困難や課題、それに対する対応

地域とともに、持続可能な事業を

組合設立からまだ1年。まだまだ地域の中で、ワーカーズ・HIOKIの活動は知られていません。これからワーカーズ・HIOKIとその役割をどのように地域の方々に認知していただくかは、今後の大きな課題です。

そのためには、利潤の追求だけをめざす単なる事業者ではないワーカーズ・HIOKIの存在と活動を、地域の自治体や自治会などの一人ひとりに知っていただく工夫が必要です。

一方で、事業として持続できる組織をどのようにつくるのかも大きな課題です。まだまだ仕事の領域や量、組合員数のバランスがとれていないため、今後さらなる検討と取り組みが必要だと考えています。今はまだ、目の前の仕事をしながら試行錯誤中ですが、本格的に事業を開始した2025年度から3年間で事業を軌道に乗せ、労働者協同組合の理念のもとに長く地域で活動できるよう頑張りたいと思っています。

  • NPO法人と共同での除草作業

今後の方向性

地域が主体で困りごとを解決する担い手に

まだ活動を始めたばかりの初期段階ではありますが、だからこそ、どんなこともみんなで話し合い、確認し、計画をひとつひとつ確実に進めることを心がけています。今後、地域の方々の理解や活動への参加の拡大も実現したいと奮闘中です。

地域では、生活の困りごとを解決する担い手が不足している現状があります。その中で、誰かにお願いするのではなく、一人ひとりが力を出し合っていくことが大切です。ワーカーズ・HIOKIのメンバーは、労働者協同組合で話し合い、ともに汗を流しながら活動していきたいと思っています。お弁当の配達や除草作業をしながら市民と話をする中で、新たな課題も見つかり始めています。その新たな課題にも対応していきたいと考えています。

地域の課題解決を進めていこうとすると、その主体は行政や組織や団体になりがちなところがあります。ワーカーズ・HIOKIはそうではなく常に主体は地域に置き、この地域で本当に必要なものは何かを市民や行政、生協などと深め合いながら事業活動を展開していきたいと考えています。また、働きたくても働けない若者たちが地域にいるという課題もあり、若者たちも仲間に加えながら、誰もが安心して暮らし続けられる地域社会づくりを目指していきます。

基本情報

法人名  ワーカーズ・HIOKI労働者協同組合
事業所の所在地  鹿児島県日置市伊集院町妙円寺1丁目11-3
設立  令和6年12月
事業内容  お弁当の配送事業・地域の除草作業
組合員数  6人
組合員の年代別構成  50代〜70代
組合員以外の就労者  0人
売上高  510万円(2025年度年間見込額)
出資1口の金額  5千円
出資の総口数  12口

(令和7年9月末現在)