労働者協同組合ACT・人とまちづくり(令和7年8月設立)
公正・中立なケアマネジメントを、協同の力で地域に根づかせる
労働者協同組合ACT・人とまちづくりは、東京都で居宅介護支援、障害相談支援、まちづくり、調査・研究、政策提言を行う団体です。介護保険制度や障害福祉制度が、高齢の方や障害のある方の安心につながるよう、認知症になっても住み慣れた地域で暮らし続けられる「共生社会」の実現をめざし、公正・中立なケアマネジメントを大切にしながら、介護・福祉の実践を通じてまちづくりに取り組んでいます。
これまでの活動の経緯
市民事業としての実践から、独立型居宅介護支援へ
「労働者協同組合ACT・人とまちづくり」の出発点は、1992年ごろ、地域で安心して暮らすために、家事・介護、子育てなど、これまで女性が担ってきたアンペイドワーク(無償労働)を地域の市民事業として形にしていこうとした実践にあります。2000年4月、介護保険制度の施行に合わせて、前身団体はNPO法人格を取得し、「NPO法人アビリティクラブたすけあい(ACT)」として居宅介護支援事業を開始しました。
その後、2014年10月にACTから独立し、当時8か所あった居宅介護支援事業所で構成する「NPO法人ACT・人とまちづくり」となりました。介護サービスを併設しない、公正・中立を基本とする独立型居宅介護支援事業を大切にしながら、労働者協同組合となった現在も地域の中で支援を続けています。
- 「かいごカフェ」を開催 介護・福祉を通じて地域を支える

組織変更をめぐる丁寧な合意形成
一方で、介護業界全体と同様、ケアマネジャーの高齢化や人材不足は大きな課題となっていました。また、NPO法人として長く活動する中で、出資という考え方を持たないまま入職する会員も増え、働き手であり経営者でもある「ワーカーズ・コレクティブ」という働き方と組織運営をどのように次世代へ引き継ぐかが問われるようになりました。
2020年12月に労働者協同組合法が成立し、2022年10月に施行されたことを受け、ACT・人とまちづくりではNPO法人から労働者協同組合への組織変更に向けた検討を始めました。2022年から2023年にかけて制度学習会を行い、NPO法人と労働者協同組合の違いを全員で共有しました。
2024年度には、組織変更の是非についてさらに議論を深めました。7月23日には、全員参加で賛成・反対に分かれてディベートを実施。事務負担や人件費への影響など、懸念点も包み隠さず共有したことで、納得感のある議論につながりました。9月27日の臨時総会では、12月に「組織変更の是非を問う」臨時総会を開くことを決定しました。
その後、有志9名による組織変更移行作業チームが発足し、定款案、事業の種類、出資金の額、法人名称などについて会員の意見を集めながら検討を進めました。しかし、12月21日の臨時総会では、組織変更の承認に必要な4分の3の賛成にわずかに届かず、議案は否決されました。
長い議論の過程には疲弊感もありましたが、あきらめきれない会員から再度の提案があり、理事会は2025年度定期総会に法人格移行を改めて提案することを決定しました。2025年6月7日の定期総会では、必要な賛成を得て議案が承認され、同年8月、「労働者協同組合ACT・人とまちづくり」(以下、ACT・人まちづくり)へと組織変更しました。
組織変更に時間を要した背景には、NPO法人であってもワーカーズ・コレクティブとして運営できているという実感や、NPO法人への社会的な認知がある中で、法人格を変える必要性を一人ひとりが納得するまでに時間が必要だったことがあります。だからこそ、この過程は単なる法人格の変更ではなく、自分たちの働き方と組織運営を改めて確認する機会となりました。
- 研修の様子 自分たちの組織を学ぶ

活動に当たり大事にしていること(意見反映の方法等)
事業所ごとの自主管理と、法人全体での共有
現在、5か所の居宅介護支援事業所は、それぞれが自主管理を基本に事業運営を行いながら、法人全体で統括する仕組みをとっています。各事業所では、5名から8名のケアマネジャーと1名の事務スタッフが、管理者を中心に常勤・非常勤の勤務形態で従事しており、全員が組合員です。
各事業所では毎月1回、職員全員が出席する事業所運営会議を開いています。事業運営、まちづくりに関する情報共有、法人への提案や質問などは、管理者会議へ報告されます。管理者会議は、5事業所の管理者、理事長、副理事長、事務局で構成され、事業計画や予算の執行状況、各事業所からの提案や課題を検討します。検討結果は各事業所へフィードバックされ、現場の意見を法人運営に反映しています。
また、年4回、法人全体の職員が参加する全体会を、会場参集型とオンラインを併用して開催しています。法人全体の事業運営や課題について、全員が提案や質問を出せるよう、管理者が持ち回りで議長を務めることで、特定の層に権限が偏らない民主的な運営を徹底しています。理事会は理事10名、監事2名で構成され、総会に次ぐ決定機関として年6回開催し、事業所運営会議、管理者会議、全体会で出された意見や課題を踏まえて審議・決定しています。
- 全体会の様子 民主的な意思決定にこだわる

予算や処遇も、みんなで考える
事業計画と予算案は、毎年度、5か所の居宅介護支援事業所の組合員全員が管理者を中心に立案します。各事業所が収支状況を把握し、自分たちの働き方と経営の両面から話し合うことを大切にしています。
昨年度は、最低賃金の改定を受け、事務スタッフの時給を最低賃金以上に引き上げることを全員で合意しました。今年度は、ケアマネジャーの時給を1,600円に引き上げるため、第5次予算まで検討を重ねました。「賞与1か月分よりも時給を上げる方が、ケアマネジャーのやる気につながる」という組合員の意見があり、話し合いを通じて結論を出しました。
2022年度に実施した職員の働き方調査では、「成果や能力に応じた評価が処遇に反映されていない」といった賃金・評価に関する課題も明らかになりました。その後、働き方検討チームを立ち上げ、2025年上期に素案(たたき台)を提案し、下期には全体で検討を進める予定です。研修参加、各種チームへの関わり、まちづくりへの参加など、誰が見ても客観的に確認できる項目に加え、組合員からは事業所としての評価も必要ではないかという意見が出ています。2026年度の賞与について、個人と事業所の二つの視点から成果や能力に応じた評価システムを第1段階として実施することを検討しています。
活動に当たり生じた困難や課題、それに対する対応
理念への共感を、組織全体で育てる
2022年度に独自で行った「職員の働き方調査」では、法人の理念・ビジョン・経営方針への共感、ワーカーズ・コレクティブの組織運営への共感、事業方針や事業計画に「経営者」と「働き手」の両方の視点で参加できているか、という3項目で、「そう思う」と「どちらでもない」の回答が拮抗しました。これは、ACT・人とまちづくりにとって、理念や組織運営の理解を改めて深める必要があることを示す結果でした。
今回のNPO法人から労働者協同組合への組織変更をめぐる議論でも、こうした課題は具体的な形で現れました。そこで、協同組合やワーカーズ・コレクティブの考え方について、関連団体との連携による学習会や見学など、実体験を通じて理解を深めることを重視しました。
また、ACT・人とまちづくりの理念やビジョンに共感する人材を長期的に育てるため、2023年度から人材育成10年計画に着手しています。新人、入職後2年以降、中堅、リーダー、管理者、理事といった階層ごとの研修内容を整理し、協同組合とは何か、ワーカーズ・コレクティブと労働者協同組合とは何か、地域コミュニティの大切さ、地域で働くことの意味、事業継続のための組織ガバナンスなどを学ぶ機会を設けています。 働く人がよりよく働く場を自らつくり、地域に信頼される事業者として事業を継続・発展させることが、この計画の目的です。
今後の方向性
事業を継続し、誰もが安心して暮らし続けられる地域へ
今回の法人格移行は、今いる組合員のためだけではありません。ACT・人とまちづくりが伴走してきた高齢の方や障害のある方、そして地域で信頼を寄せてくださる方々に対して、事業を存続・継続する責任を果たすための選択でもあります。そのためには、思いに共感する次世代の育成が欠かせません。
将来振り返ったとき、労働者協同組合への組織変更が大きな転機であったと言えるよう、ワーカーズ・コレクティブという働き方を次世代へ引き継ぎ、組織運営の基盤を強めていくことを最優先課題としています。
2000年4月に始まった介護保険制度の中で、ACT・人とまちづくりは、公正・中立を仕組みとして担保する独立型居宅介護支援事業者として歩んできました。労働者協同組合となったことで、働く人がライフステージに応じて働きやすい環境を自らつくり、経営も協同して担うことを、より明確に発信していきたいと考えています。
さらに、居宅介護支援事業や障害相談支援事業を通じて見えてくる、公的制度だけでは十分に対応しきれない多様な地域ニーズにも向き合っていきます。「誰もが安心して暮らし続ける」ことをキーワードに、他団体と協働し、地域密着のネットワークを生かしながら、新たな事業にも挑戦していきます。
- 通常総会後の集合写真 次世代の育成へ

基本情報
法人名 労働者協同組合ACT・人とまちづくり
事業所の所在地 東京都西東京市田無町四丁目9番10号
設立 令和7年8月(NPO法人からの組織変更)
事業内容 居宅介護支援、障害相談支援、まちづくり、調査・研究、政策提言
組合員数 44人
組合員の年代別構成 40代〜70代
組合員以外の就労者 0人
売上高 1億741万円(2025年度実績)
出資1口の金額 2千円
出資の総口数 154口
(令和8年3月末現在)

